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女子の中学お受験でモヤッ。早慶付属中で女子の募集はなぜ少ないのか

「学校側の発言はほぼ本音でしょう」

教育ジャーナリストおおたとしまささん

教育ジャーナリストおおたとしまささん

――募集人員の男女比について、学校関係者が「女子を多く入れると元気になりすぎる」と回答したことは、どこまでが真意なのでしょうか。 おおたさん(以下、おおた)「おそらく、ほぼ本音だと思います。この件に関してはエビデンスがないので、はっきり言えないことではありますが、男子と女子の比率は2:1くらいが、異性がいることが双方にとって効果的に働くベストバランスだ、と学校運営の世界では、まことしやかに言われていることです。エビデンスではなく、あくまでも経験的に得られた知見として学校側も認識しています」 ――「バランス」というのは、一体どのようなものなのでしょうか。 おおた「それぞれの性別のよいところを伸ばし合えるバランス、ということになります。思春期の子どもたちをみると、男子よりも女子のほうが活動量・発言量ともに多く、成熟している子が多いので、男女比を同じにすると、男子が女子の勢いにのまれ、萎縮(いしゅく)して肩身の狭い思いをしてしまいます。  実際に、わたし自身も学校の取材をしていて、『女子が多い学校だなぁ』と思っていたら、実は男女の比率は同数だった、という経験をしたことが何度もあります。  ただし、ジェンターの視点で考えたときに、これは危険な発想であることは、教育現場にいる先生方もわかっています」

大人びた女子と子供っぽい男子

屋上ではしゃぐ高校生たち――たしかに、思春期の女子は、同学年の男子よりも活発な子が多い気がします。 おおた「思春期の子どもは発達段階的に、男子に比べて女子のほうが肉体的・精神的・学力的に早く成熟するというのは、2006年に発行された『ニューズウィーク日本版』の男の子はなぜ女の子より劣っているのか、という記事の中でも、科学的に指摘されていました。このように、社会的に女性が弱者になりやすいことに対し、この時期の男性は生物としての弱者になりやすい、ととらえることもできます。  実社会の男女比はたしかにほぼ1対1ですが、それを発達の差が大きく出る時期の同年齢だけで区切られた集団の中で、そのまま再現することは、本来難しいことかもしれないのです。このことを考慮したうえで、学校側は男女比を調整して、双方にとってベストなまなびやを作っている、と考えることができます」 ――子どもたちの発達段階にあわせて、男女比を調節することで学校側がまなびやを作っている、と知れば納得度も少し高まります。  では、学校側は男女比によって、どのように学ぶ場所を作っているのでしょうか?続く後編では、それぞれの学校が設けている募集人員の男女比から、まなびやとしての意義を考えてみます。 【おおたとしまさ】 1973年生まれ。教育ジャーナリスト。著書は『名門校とは何か?』『ルポ塾歴社会』『受験と進学の新常識』など多数。 <文/瀧戸詠未> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
瀧戸詠未
大手教育系会社、出版社勤務を経てフリーライターに。教育系・エンタメ系の記事を中心に取材記事を執筆。Twitter:@YlujuzJvzsLUwkB
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