「子どもの症状、ググって不安に…」医療デマを見分ける方法を小児科医に聞いた
子どもや自分自身に気になる症状などがあったとき、まずは「○○ 原因」「○○ 病気」などとネット検索をする人は少なくないでしょう。
2016年、大手IT企業DeNAが運営していた、健康・医療系キュレーションサイト「WELQ」が、誤った医療情報を大量に配信していると非難を受け、サイトが閉鎖される騒動がおきました。
近年では、医師や看護師、薬剤師など専門家がインターネットサイトで記事を書いたり、TwitterなどSNS上で情報を発信したりするようにもなり、こうした医療デマは早期に是正される流れにあります。
一方で、子育てなど一部の分野では誤った医療情報や根拠の無い情報を配信するメディアが数多くみられるのも事実です。背景にはどのような問題があるのか? 医療デマに惑わされないためにはどのようにネットを利用すればいいのか? 前回に引き続き『小児科医ママが今伝えたいこと! 子育てはだいたいで大丈夫』の著者であり、小児科専門医の森戸やすみ先生に話を聞きました。
【前回の記事】⇒ママの愛が足りない? 「根拠ナシ育児論で自分を責めないで」と小児科医
――子育てに関する医療情報でデマや根拠の無いものが、ネット上では依然として多く見られます。背景にはどのような問題があると見ていますか。
森戸やすみ先生(以下、森戸):子育てに関する医療情報には常に新しい読者がいます。情報に触れる方は皆さん初めてのお子さんか、二人目がほとんど。みんな初耳の情報です。
子育て真っ最中だと、次から次に新たな問題が出てきます。過去を振り返る時間があまりない。仮に前見た情報が誤りだと気が付いても、あえてそれを訂正したり、他の方に伝えたりはしない方が多いと思います。だから、ウェブ上の医療デマ(子育てに関する)は残りやすい。訂正されても新たなデマが出てきたり、同じデマがまた出てきたりするのではないでしょうか。
――先生が小児科医として現場で多くの親御さんたちをみてきて、医療デマの問題を感じた事例があれば教えてください。
森戸:母乳の後にミルクをあげていたお母さんは「ググったら、だいたい40cc飲ませているから、それでいいですよね」と私に質問してきました。本来は子どもにあわせて、顔をみて満足するまであげれば問題ありません。40ccという数字はググった時に出てきたお母さんが自分の子どもにそうしていただだけ。何も根拠にはならない、と話をしたこともあります。
あるお母さんは、粉ミルクを飲ませると発達障害になる、という情報を見て「これは本当なのか」と相談に来ました。医師からすれば、まったく誤り。とんでもない話です。でも、不安にかられてしまった。こういった話は本当にたくさんあります。
――一方で、Twitterなどを見ると、医師や看護師など医療従事者の方が、デマを訂正したり、非難することも増えました。
森戸:たしかに、少し良くなってきた部分はあります。Twitterを始める小児科医もたくさん出てきました。SNSをやっている助産師さんも増えました。看護師さんもおおやけにしていないだけで、たくさんいると思います。ですから、デマが出てきても、それを非難する声や訂正する声は見つけやすくなったと思います。以前より正解に近い情報にたどり着きやすい。
――ではなぜ、デマは無くならないのでしょうか。
森戸:育児雑誌でもそうとは知らずにデマを載せてしまうことがあります。専門家だからといって、必ずしも医学的に正しいことを話すわけではありません。ですが、雑誌やウェブメディアでも医学的に誤った発言をする医師が監修している場合があります。背景には育児特有の問題もあると思います。
――それはなんなのでしょうか?
森戸:例えばガンだと、はっきりとダメな治療、エビデンスのある良い治療がわかります。けれど、育児は長期スパンです。結果と原因がわかりにくい。エビデンスのある“正しい育児”はありません。こうすれば絶対に間違いがないという育児法は示せない。そのため、言ったもの勝ちになってしまう部分があるのではないでしょうか。
嘘を言っている人もそれがまったく嘘だとは思っていない。しかも、嘘に加えて正しい医療情報を話している場合もあります。知らない人が聞くと、どこまでが正しいのかが分からない。見分けるのがとても難しいです。
「ググったら…」と質問してくるお母さん
育児雑誌でもデマを載せる

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