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長瀬智也の『俺の家の話』も挨拶も、“自分がない”終わり方が泣かせる

年齢を重ねて俳優として器が大きくなっていった

「白線流し 二十歳の風」フジテレビジョン

「白線流し 二十歳の風」フジテレビジョン

『恋人よ』(1995年フジテレビ系列)や『白線流し』(1996年フジテレビ系列)、『ふぞろいの林檎たちIV』(1997年TBS系列)の頃は、長瀬智也はとにかく美しく儚(はかな)げでした。美少年というよりも美少女のような可憐さがあって、にもかかわらずなんだか「不遇」や「貧乏」がよく似合う。 『ふぞろいの林檎たちIV』で背伸びした美しき田舎青年が「ピッツァとろうか」と言うシーン、そのチグハグさに悲しさやおかしさがあって、今も忘れられません(当時はよく真似しました)。  しかし、それがクドカン作品『池袋ウエストゲートパーク』(2000年TBS系列)との出会いによってワイルドさが引き出され、彼の持ち味の一つ・哀愁と上手く化学変化を起こしました。
『タイガー&ドラゴン「三枚起請の回」』 [DVD](TBS)

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 さらに、ワイルドさが強化され、美しいゴリラ化してくると役の幅もグンと広がり、『タイガー&ドラゴン』(2005年TBS系列)では哀愁とワイルドさに加え、本人の持ち味である不器用さや真っすぐさなどもクドカンによってあて書き(演者を想定した脚本)され、魅力的なキャラクターが生まれました。  さらに『うぬぼれ刑事』(2010年TBS系列)を経て、映画『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』(2016年 宮藤官九郎監督)ではとうとう鬼に! そして『俺の家の話』へと長瀬が年齢を重ねてどんどんその器が大きくなっていくにつれ、クドカンが託した切なさと笑いも最高潮に盛り上がっていった気がします。
「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ DVD 通常版」東宝

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クドカンの得意技「あて書き」の最高傑作が長瀬智也

 クドカンの得意技「あて書き」の最高傑作が長瀬智也だと思います。真っすぐで熱くて不器用で優しくて繊細で、ちょっと(だいぶ?)天然でちょっとおバカな一方で、人の気持ちには敏感で、めちゃくちゃ鋭く賢さもある、感受性豊かで誰にでも愛される、そのまんま少年漫画の主人公のような長瀬智也。  その人間性がクドカン作品の中で「キャラクター」として立体化されたことで、世間により愛される人になっていったところもありますし、その一方で、クドカンが長瀬によって想像力・創造力を刺激されていったこともあるでしょう。  普通だったらありえないことも、長瀬智也ならありそう、できそうと思わせる。実際、『俺の家の話』では、能楽の稽古をしながら覆面レスラーをした彼ですが、本当にプロレスラーに見えるからだづくりをしていましたし、吹き替えナシでプロレス技をやってしまうのも何もかも想像を超えてきます。  単なる天才ではなく、きっと努力の天才であるうえ、子どものように真っすぐで豊かな感性で、嘘がない。こんな人、ジャニーズ云々にかかわらず、他にいないのではないでしょうか。
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