人気女性コメディアンの壮絶な過去。虐待、いじめ、セクハラ…涙を笑いに変えるまで
いま全米で絶大な人気を誇るコメディアンのティファニー・ハディッシュ(41)。機転のきいたマシンガントークでお茶の間を抱腹絶倒させているが、その半生は壮絶そのもので、母親からの虐待、学校でのいじめ、結婚や離婚、同業者からのパワハラやセクハラなど、波乱に満ちていた。そんな笑えない体験を笑いに変えてきたティファニーだが、子供時代にみじめな経験をしたことで、「自分をゴミだと思っていた」時期もあったという。
2017年公開の大ヒットコメディ映画『ガールズ・トリップ』(日本未公開)で一躍ブレークを果たしたティファニー。その後、アフリカ系アメリカ人として初めて、米人気コメディ番組『サタデー・ナイト・ライブ』のホストに抜擢された。2018年にはテレビで活躍した人物に贈られるエミー賞を獲得し、米タイム誌が発表する「世界でもっとも影響力がある100人」にも選ばれた。また、アカデミー賞でプレゼンターを務め、グラミー賞で数回のノミネートと受賞も果たしている。
いまや全米で最も注目を集める女性コメディアンとなったが、ここに至るまでの道のりはきわめて険しいものだった。
米ロサンゼルスで生まれたティファニーは、複雑な家庭環境で育った。自身が3歳のころに実父が蒸発し、のちに母が再婚。父親が異なる弟2人と妹2人とともに暮らした。
その後、母親が交通事故に遭い、脳を損傷。この事故は、義父が保険金目当てで故意に起こしたものだったそうだ。
当時9歳になっていたティファニーは、母に代わり幼い兄弟姉妹の面倒を見ることに。しかし、脳の損傷で人格が変わった母から激しい虐待やネグレクトを受けるようになり、児童養護施設に送られ、のちに弟や妹とはそれぞれ違う里親の元で暮らすことになったという。そして15歳のとき、祖母に引き取られ、再び妹や弟とともに暮らすようになったそうだ。
壮絶な家庭環境に加え、学校でもいじめを受けていたというティファニーは、徐々に「笑い」に希望を見いだすように。
17歳のときには、ソーシャルワーカーに勧められたことがきっかけで、貧困やいじめなどの問題を抱えた子供たちを支援する「コメディキャンプ」に参加。プロのコメディアンたちが集結し、笑いの力で子供たちに生きる希望を与えるこのキャンプによって、ますます笑いの世界に引き込まれるようになったという。
コメディアンとして駆け出しのころは、車中に泊まり、ホームレスのような状態だったというティファニー。長い不遇の時代を経て、2017年の映画『ガールズ・トリップ』でブレークしたのは30代後半だったという。日本ではまだそこまで知名度が高くはないが、2019年には著書『すべての涙を笑いに変える黒いユニコーン伝説』の日本語版が発売され話題に。
壮絶な子供時代、結婚や離婚、パートナーからのDV、業界の権力者によるパワハラやセクハラなど、笑えない半生が赤裸々に綴られている本書。けれども、そんなつらい現実も笑いに変えて這い上がってきたティファニーの力強い生きざまを感じられる一冊となっている。
自らも養護施設や里親の元で育ち、壮絶な子供時代を経験したティファニーは、ブレークして間もなく、助けが必要な子供たちをサポートする基金「She Ready Foundation」を設立。施設の訪問を続けているほか、スーツケースの寄付も行っている。ところで、なぜスーツケースの寄付なのか? その理由をティファニーはこう語っている。
「里親と暮らすことになったとき、自分の荷物を全てゴミ袋にまとめていた。その経験によって、自分を“ゴミ”だと思うようになった。初めてスーツケースを手にしたとき、私は自分を旅人だと思えた。私はちゃんとした目的を持った人間であって、ゴミではないのだと」
スーツケースに自分の持ち物を入れて、次の目的地へ旅立ってほしい。そんな思いが込められているのだ。
実父は3歳で蒸発。母から激しい虐待を受けた
複雑な家庭環境、学校でのいじめ……救いとなったのは「笑い」
自分を“ゴミ”だと思うようになった
そんなティファニーがいま非常に気にかけているのが、つらい境遇で生きている子供たちのこと。米情報番組『エンターテイメント・トゥナイト』に登場した際、こんなふうに話している。 「コロナを受けて、親のいない子供が今はなおさらたくさんいる。いまは里親制度のアピール月間だし、私たちは皆、できることをするべきだと思う」 「自分がある程度成功したことで、里親になりたいとすごく思うようになった。そうしたら、養子縁組するのがおそらく一番だろうと弁護士から提案されたの。だから、その手続きを進めているところよ」 「5歳以上の子が望ましいわね。トイレに1人で行けて、言葉を話し、コミュニケーション能力が備わっているから。恐ろしい社会に出るための準備が整えられるよう、色々な知識を付けてあげたいと思っているの」 <文/BANG SHOWBIZ、女子SPA!編集部>