とはいえ、3人も子育てをしながら医師を続ける内田さんは、かなりハードな毎日なはず。どうやって心身のパワーをキープしているのでしょうか?
「もちろん子どもが風邪をひき続けて、保育園に行けずに、私と夫が交互に仕事を休むようなこともありました。そんなときは優先順位をつけて必要な仕事をこなし、そのうち落ち着いたら巻き返せばいいやと思っていました。
またアメリカでは40年くらい前から医大の男女比が半々だったようで、上司も女性が半数くらいです。そして男女とも育児を経験した人たちなので、『今が大変でも、とにかく“止まらないこと”が大事だよ。止まってしまうと再発進は大変だけど、今はどんなに遅いペースでもいいから、続けていれば、必ずその努力の貯蓄は実る』というようなアドバイスを男性の上司から受けました。
そうは言っても、家事・育児は、アメリカでもやはり女性に降りかかる負担の方が多いです。去年、コロナで公立学校がオンライン授業になったことで、家で子どもの世話をしながら働くことになった、あるいはそのために職を失ったのは、圧倒的に女性の割合が大きかったです」
内田さんの話を聞くと、アメリカでも、いいことばかりではありません。完全な能力主義ですし、健康保険も皆保険(公的保険に誰でも入れる)ではないので、保険に入っていなければバカ高い医療費がかかります。「手厚い保障」という意味では、日本の方が安心です。
一方で、能力とガッツのある女性にとっては、アメリカのほうが、家庭も仕事も望むものを手に入れられる環境ではあるでしょう。
国によって方法に違いはあれど、「家庭か仕事か」を選ばなければいけない社会は、変えていきたいものです。
【インタビュー前編を読む】⇒
医師で3児のママ・内田舞さん「『ドラえもん』のしずかちゃんがきっかけで渡米しました」
【内田舞さん プロフィール】
小児精神科医、ハーバード大学医学部助教授、マサチューセッツ総合病院小児うつ病センター長、3児の母。2007年北海道大学医学部卒、2011年Yale大学精神科研修修了、2013年ハーバード大学・マサチューセッツ総合病院小児精神科研修修了。日本の医学部在学中に、米国医師国家試験に合格・研修医として採用され、日本の医学部卒業者として史上最年少の米国臨床医となった。趣味は絵画、裁縫、料理、フィギュアスケート、スキー。子供の心や脳の科学、また一般の科学リテラシー向上に向けて、発信している。
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@maimaiuchida
Twitter:
@mai_uchida
<文/和久井香菜子>