
「『妻が絶対に別れないと言っていて、このままでは裁判沙汰になる。自分としてもやっぱり妻は捨てられない。慰謝料を払うから別れてくれ』と言われたんです。
『いまさら何言ってんの!?』って感じですよね。納得できず何度も話し合いを求めましたが逃げられ、やっと約束をとりつけたと思ったら200万円の札束を渡され『これで勘弁してくれ』と。こんなんで終わりかと脱力しました」
最初は意地でもYさんを妻から奪うつもりだったという坂井さんですが、一連のドタバタでうつ気味になりすっかり戦意喪失。体調不良が続いたうえ、会社でYさんが視界に入るのも精神的に辛くなり、退職して実家に戻ることになってしまったとか。
「何もかも失い、しばらくは心身ともにボロボロで引きこもりでした。でも、一年近く経ち少しずつ元気になってきて。派遣で事務の仕事も始めました」
しかしその矢先、元夫が再婚したという噂を耳にして……。

「しかもデキ婚で、私が住みたいと憧れていたエリアにマンションも購入したと。
こんなこと思える立場ではないのですが、『子どももマンションも本当は全部私のものだったのに!』『私はすべてを失いみじめな生活をしてるのに!』と、悔しくて発狂しそうになりました」
そもそも、夫に不満はなかった坂井さん。「Yより元夫のほうが理性的で行動的でよっぽど頼りになるのに、なぜ不倫などしてしまったのか」と、後悔で泣き暮らす日々が続いたそう。
「そんな私を見て、それまでは何も言わず見守ってくれていた母がこう言ったんです。
『お母さんはNさん(元夫)が再婚して安心してる。きちんと夫婦になる覚悟がないまま結婚した自分の娘のせいで嫌な思いをさせてしまったからね。Nさんの幸せを喜べない自分勝手な人間のままなら、あなたは再婚なんて考えないほうがいい』って。痛いところ突かれて大号泣してしまいました」
しかし、母の言葉で少し改心。まだみじめな気分は拭いきれないものの、人生を取り戻すべくひとまずは再就職活動に専念しているとか。
子どもがいないからといって、カジュアルに不倫をしてしまった代償は大きいようです……。
【他の回を読む】⇒
シリーズ「女の人生、悲喜こもごも」の一覧はこちらへ
【他のエピソードを読む】⇒
「実録!私の人生、泣き笑い」の一覧へ
<TEXT/丸本綾乃 イラスト/鈴木詩子>