幽霊の佐藤健にキュン…。ドラマ『100万回言えばよかった』でみせた“美しさ”とは
彼は単なるイケメン俳優ではない。佐藤健は、静かなるたたずまい、静かなる美しさを秘めた特別な俳優である。
井上真央と佐藤健が、もう二度と会うことができなくなった恋人たちを演じるドラマ『100万回 言えばよかった』(TBS系・以下『100万回』)が、毎週金曜日よる10時から放送されている。会えないけれど、守護霊のように常に側にいるというファンタジーな幽霊譚。
「イケメンと映画」をこよなく愛する筆者・加賀谷健が、佐藤健の俳優としての特性を探りながら、有名映画さながらの名場面誕生に期待を込める。
誕生日の夜。すっぽかされた相馬悠依(井上真央)は、激おこで掃除機の電源をオン。ストレス発散で掃除機をかけまくりながら愚痴をこぼす彼女の背後で、恋人の鳥野直木(佐藤健)が静かに立ち尽くす。棒立ちでも完璧なたたずまいの佐藤健を見てもまだ怒るのかと思いながら、もうすこし様子を眺めてみる。
掃除機をオフにした悠依が冷蔵庫を開けると、中にはハンバーグとプリン。彼女の誕生日には直木が必ず作る組み合わせだ。そこから前の年の誕生日が回想される。閉店後の洋食屋「ハチドリ」で、シェフみずからハンバーグディナーをこしらえた直木は、すこし緊張気味の表情をしている。
悠依はハンバーグにぱくついてご満悦。「馬鹿の一つ覚えが最強だから」と言って、右手で頬杖を付く佐藤健の静かなる美しさ。カメラがここぞというアングルで表情を捉える。決め顔をするでもなく何となく相手を見つめる佐藤らしい透明感のある表情を、第1話冒頭で早くも見られたことに視聴者も同様にご満悦である。
このドラマ、ここから先が面白い。ある日、こつ然と姿を消してしまった直木を探すために悠依は警察に捜索願いを出す。そのとき恋人であることを証明するためにツーショット写真をスマホから選んで見せると、受付担当が「素敵な人」と言う。直木は普段あまり笑わない人だから笑顔がすくなく、眼光鋭い顔はむしろ怒っているように見えると説明する。
さらにまた回想がある。今度は里親のもとで育ち、幼なじみだったふたりが「ハチドリ」のお客とシェフとして再会した場面。そのまま飲みに行くことになり、悠依のほうはわかりやすく楽しさだだ漏れなのに対して、直木はすこしシニカルな感じで、喜んではいるはずなのに笑ったりはしない。お酒を飲んでもテンションは変わらない。
ローテンションを一定に保つ直木のキャラクター性は、静かなる美しさを秘めた佐藤健にとってははまり役だろう。ローテンションであると同時にオフビート。リズムが狂わないからこそ、どの場面、どの瞬間でも佐藤のイケメンの調子は、常に一定で、崩れることがない。