横浜流星が「一番シビれる」と断言したシーンに納得。最新作でみせた“異次元の演技”とは
2023年4月21日より、映画『ヴィレッジ』が公開されている。
本作は「世界の縮図」が表れていることに戦慄するヒューマンサスペンスであり、グイグイと物語に惹き込まれるエンターテインメントでもある、実に多層的な見方ができる力作だ。スクリーン映えするリッチで美しい画もふんだんなので、是が非でも映画館で観てほしいと心から願う。
そして、これだけは先に断言しておきたい。「本作の素晴らしさは横浜流星を抜きには語れない」「横浜流星がいてこその映画である」と。その理由から記していこう。
本作で横浜流星が演じるのは、ゴミ処理施設で働く作業員の青年・片山優。彼は仕事中に村長の息子からいびられ続け、わずかな給料も母親の借金の返済に消えていく希望のない毎日を過ごしていた。
生き地獄そのものの日常を過ごす、横浜流星の目の輝きがないどころか“生気ゼロ”の姿も凄まじいが、誰もが息を呑むのは、古田新太演じる村長のとある言葉を聞いて、表情をガラリと変える様なのではないか。驚きと戸惑い、同時に沸き起こる喜び、それぞれがないまぜになったような“瞬間的かつ複雑な表情の変化”は、脳裏に焼きつくような衝撃があった。
テレビ番組『フィルメンタリー』の特集では、横浜流星自身が「いちばん痺れる場面」として同シーンをあげており、実に15テイクを費やしていたのだという。繰り返し撮影した甲斐のある、もはや再現は不可能なのではないかと思えるほどの瞬間的な表情の変化を目撃してほしい。
本作は、「ありとあらゆるタイプの横浜流星の満漢全席」状態になっている。前述した生気ゼロの姿や瞬間的かつ複雑な表情の変化以外でも、幼馴染の女性から聞いた言葉から希望を見出してポロポロと涙を流す姿や、朗らかな笑顔で村のPR活動に勤しむ“普通の好青年”の姿が映し出されたりもするのだから。
ネタバレになるので詳細は伏せておくが、後半ではさらに「推し俳優の苦しむ姿なんて見たくないはずなのに、こういう横浜流星こそがすごいし圧倒される!」と、良い意味でアンビバレントな気持ちにさせてくれる。そのとんでもない展開と、それに見合う横浜流星の鬼気迫るという言葉でも足りない熱演を見ることができる。
表向きは真っ当な正義心を持つ青年でありながら、一歩間違えば狂気に飲み込まれる危うさは『流浪の月』の役柄にも似ている。しかし、本作ではさらにネクストステージに到達したかような、横浜流星の新境地どころか異次元の演技を目の当たりにできたのだ。
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さらに壮絶なのが、最悪な育ち方をしたジャイアンのような暴力性を見せる、一ノ瀬ワタル演じる村長の息子との対決シーン。“長回し”で撮られた同シーンは、横浜流星との体格差もあいまって良い意味で絶望的な気分になれる。実際に朝の5時まで撮影が続けられたという、役者たちのメンタルを心配してしまうほどの、こちらもまた二度とは撮れないであろう映像の迫力に、良い意味で恐れ慄いてほしい。
なお、本作は「弱者に対する一方的な暴力の描写がみられる」という理由によりPG12指定(誰でも鑑賞可能だが小学生には保護者の助言や指導が必要)のレーティングがされている。あらかじめ了承の上で、観てほしい。
“瞬間的な表情の変化”が脳裏に焼きつく

苦しむ姿なんて見たくないはずなのに圧倒される

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