子どもに配慮?令和のアニメで「姿を消した人たち」。昭和では“当たり前”に出ていたのに
核家族、同性婚、シングルマザー/ファザー、DINKsなど、多様な家族の在り方が存在し、昔ながらの家父長制が崩壊しつつあるこの令和の時代。ドラマや映画などのフィクションの世界でも、家族の描かれ方が変わってきました。
なかでも幼児・子ども向けアニメは、人間の価値観を形成するために大きな影響を与えるもののためか、その傾向が顕著に現れてきているようです。
26年ぶりに主役が交代し、4月より新シリーズが放映開始したアニメ『ポケットモンスター』(テレビ東京系)。こちらの主人公・リコは全寮制の学校に通っている設定であり、現時点で祖母や両親の存在は示されているものの、登場はしていません。もう一人の主人公・ロイも、家族として確認できるのは島の長老である祖父の存在のみです。
20周年を迎えたプリキュアシリーズの新作『ひろがるスカイ!プリキュア』(テレビ朝日系)も同様に、主人公のソラ・ハレワタールの両親は現時点では回想で登場したのみで、2人目のプリキュアである虹ヶ丘ましろも、両親とは海外赴任を理由に別居している状態です。
さかのぼってみれば、先代アニメポケモンの主人公・サトシも母親しか登場しておらず、しかも本人はほぼ旅に出ている設定。今作以前の令和のプリキュアは両親こそは存在するもの、みな共働きの設定です。前々作の『トロピカル~ジュ!プリキュア』の主人公は互いの仕事の関係で両親が別居しているというものでした。
また、日本では令和元年直前にスタートした、幼児に絶大な人気を誇っている海外アニメ『パウ・パトロール』(テレビ東京系)の主人公・ケント。彼においては、本国の放送開始からは10年近く経っていますが、いまだに両親や家族がいるかいないのかさえ言及されていません。
昭和から平成にかけて放送開始した幼児・子ども向けアニメに目を向けると、そこには「家族」の姿がありました。
『ドラえもん』(テレビ朝日系)をはじめとする藤子不二雄アニメや『クレヨンしんちゃん』(テレビ朝日系)『サザエさん』『ちびまる子ちゃん』(ともにフジテレビ系)などでは、主人公を取り巻く人々の中で家族の存在は友人よりも大きく、しかも、母親は専業主婦がほとんど。家族全員で食卓を囲む姿が頻繁に描かれていました。前時代ではそれが多くの人々の中での普通の価値観でしたから、当然のことでしょう。
しかし、一方で「仲のいい家族を見せられるのが辛かった。家族が出てくるアニメが嫌いだった」「自分の家にはなぜお父さんがいないのだろう」という一部の子どもたちの声もあったと言います。