ボクサーを演じた横浜流星がボクシング指導者にした“依頼内容”が衝撃。最新映画でみせる覚悟とは
沢木耕太郎の同名小説を実写映画化した『春に散る』が8月25日より公開されている。
ボクシングを題材とした作品であり、プロと同様の本格的な指導の元、俳優たちが鍛え上げた肉体をぶつけあう試合シーンが大きな見所となっている。
何より主演の横浜流星が素晴らしい。その表現力が、もうひとりの主演である佐藤浩市と師弟を超えて親子のようになっていく関係性や、試合シーンの迫力にも直結していくからだ。さらなる映画の魅力を記していこう。
かつてチャンピオンになる夢を諦めた元ボクサーの広岡仁一(佐藤浩市)は、アメリカでホテル経営者として成功したものの、不完全燃焼の心を抱えて帰国する。
そんな広岡が出会ったのは、不公平な判定負けに怒りを募らせ、ゼロからもう一度ボクシングを教えてほしいと願う青年・黒木翔吾(横浜流星)だった。
まず、立場の異なる2人の“再起”の物語として面白い。心臓に病を抱えている広岡は頑なに師匠になることを拒もうとするが、それでも翔吾は「俺も先なんかない。今しかないんだ」と弟子入りすることを熱く訴える。
初めこそ水と油、相性が悪く思える2人が共にボクシングで「何かを掴み取る」ドラマが始まるのだ。
翔吾の荒々しい性格はボクシングのスタイルにも現れており、そのせいでジムから入会を断られたりするし、とある問題を起こして広岡が対応に追われたりもするし、終盤ではとあるエゴイスティックな主張をする一幕もある。
やんちゃを通り越して不良息子のような横浜流星に、口ではなんだかんだと言いつつお父さんの佐藤浩市が見捨てず構ってあげるかのような、ピリピリとしながらも、ちょっと微笑ましくさえある関係性が魅力的だった。
ちなみに翔吾は原作ではボクシングジムの会長の息子だったが、映画では幼い頃に父親が出ていき母親に育てられたという設定に変わっている。だからこそ、翔吾が広岡に「本当にいて欲しかった父親」の姿を投影をしているようにも思える、上手いアレンジだった。
ヒロインの佳菜子(橋本環奈)との関係もとてもやさしく尊いものだったので、そちらも期待してほしい。
立場の異なる2人の“再起”の物語
不良息子っぽい横浜流星と、父親のような佐藤浩市
