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「維新による文化軽視」と批判もあるが実情は…“博物館の収蔵品廃棄”の知事発言うけ館側が明かす

 2024年7月10日、奈良県の山下真知事の発言がSNS上で物議を醸している。7月16日から2027年度までの休館が予定されている奈良県立民俗博物館の対応を巡ってだ。
1974年に開館した奈良県立民俗博物館

1974年に開館した奈良県立民俗博物館。大正から昭和初期の生活用具や農具など計約4万5千点収蔵を所蔵する

 奈良県は、休館中に収蔵品の整理と老朽化した電気設備の改修を行うとしているが、山下知事は「ルールを決めた上で価値のあるものを残し、それ以外のものは廃棄処分することも検討せざるを得ない」との見解を示した。  その発言に対し、X(旧ツイッター)を中心に「資料・文化・研究への軽視ではないか?」と批判の声が上がり、山下知事が日本維新の会所属ということもあり、関連して維新への批判まで散見されるようになった。  維新による文化を軽視する政治は、過去にも問題視されてきた。例えば、橋下徹氏(当時、大阪維新の会代表)の大阪市長時代(2011~2015年)には文化振興予算が削減され、2015年度に大阪市は文楽協会への補助金を廃止した。  人形浄瑠璃文楽は、ユネスコ無形文化遺産にも登録されている伝統芸能にも関わらずだ。「文化事業の軽視が奈良県でも起きるのではないか」という世間の危惧が、維新への批判としてもあらわれている。  そこで、本件に関して奈良県立民俗博物館への取材を行なった。そこで見えてきたものとは。

国の重要有形民俗文化財も所蔵する奈良県立民俗博物館

国の重要有形民俗文化財「吉野林業用具と林産加工用具」の一部

国の重要有形民俗文化財「吉野林業用具と林産加工用具」の一部。奈良県南部の吉野郡内で使われていた、林業関係用具と林産加工品の製作に用いられた用具類及び一部製品1908点の資料群が指定されている

 大和民俗公園内にある奈良県立民俗博物館は、1974年に開館。大正から昭和初期の生活用具や農具など計約4万5千点収蔵を所蔵する。  その中には、国の重要有形民俗文化財とされる「吉野林業用具と林産加工用具」なども含まれる。公園内には、県内各地から移築・復原した江戸時代の民家など15棟があり、その管理・展示も行なっている。  館内の空調設備はすでに壊れてしまっているため、学芸員がガイドツアーを開催する日は、暑さ対策として展示室に氷柱と扇風機を設置するという健気な工夫も見られた。  そのような状況に追い討ちをかけるように、先の山下知事の発言だ。Xでは「資料を守ることをなぜ考えないのか?」「異常な対応だ」「失うのは一瞬でも、二度と戻ってこない」などといった多くの批判ポストが寄せられ、中には他県の博物館からのものも見られた。

民俗資料は歴史や文化の理解に不可欠なもの

山下真奈良県知事のXより

山下真奈良県知事のXより

 そもそも民俗博物館が扱う民俗資料とはどのようなものなのか? 文化財保護法では「衣食住、生業、信仰、年中行事等に関する風俗慣習、民俗芸能、民俗技術及びこれらに用いられる衣服、器具、家屋その他の物件で我が国民の生活の推移の理解のため欠くことのできないもの」と定義されている。  つまり民俗資料の対象となるのは、一般の人が暮らしの中で使ってきたモノや行なってきたコトだ。絵画や美術品のようにわかりやすい特別感や華やかさがないため、その価値が伝わりにくい部分もある。  しかし、同第三条には「政府及び地方公共団体は、文化財がわが国の歴史、文化等の正しい理解のため欠くことのできないものであり、且つ、将来の文化の向上発展の基礎をなすものであることを認識し、その保存が適切に行われるように、周到の注意をもつてこの法律の趣旨の徹底に努めなければならない」ともある。奈良県の今回の資料廃棄はこの内容にも抵触する可能性はないのだろうか。総務学芸課長の政木一美さんに館の見解を聞いた。
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じつは昭和50年代から続く問題だった
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