Entertainment

粗品、賞レース審査に絶賛集まるも『M-1』審査員は難しいワケ。“松本人志超え”のネタ論評の可能性は?

霜降り明星・粗品が、3月2日に放送された『第14回ytv漫才新人賞決定戦』(読売テレビ)にて初となる賞レースの審査員を務めた。 粗品は辛口の点数を付け続け、最高点は優勝した「フースーヤ」の86点で、最低は「オーパスツー」の77点。平均して、他の審査員より10点ほど低い採点を行った。 この審査方法に賛否両論が起きたが、多くは思い切った審査をした粗品を褒め称えるものが見られ、中には『M-1グランプリ』の審査員も務めるべきだという声が挙がっている。 そこで、『ytv漫才新人賞決定戦』の審査方法を軸に、粗品が『M-1』で審査員を担当できるのか? 元テレビ局スタッフである筆者が考察してみたいと思う。

粗品の審査は何がすごかったのか?

まず、今回の粗品が行った審査は何が革新的だったのか? 一番インパクトを与えたのは低い得点だ。 通常、『M-1グランプリ』をはじめ多くの賞レースは「90点」が現在の基準値となる。その不文律を、粗品がぶっ壊したことで大きな話題を集めている。しかも、粗品は悪目立ちするために低い点を付けたわけで無く、どの審査員よりも各コンビに細かく改善点を提案。ネタに関する神コメントを連発して大絶賛を受けた。 粗品は、最近の賞レースでの得点に関するルールをぶっ壊した上で、誰よりも熱くネタに関する論評をしたことで視聴者から信頼を得たのだ。 各コンビへのネタに関する論評が特にすばらしく、M-1王者らしい分析力を披露。 例えばタチマチには、ネタの手数を増やすことやフォーマットを見直すことを提言した。翠星チークダンスには、漫才のやり取りを男女のイザコザに落とし込む手法は「ちょっとシャバい」とバッサリ。ただ、ポテンシャルの高さを評価し、2人でしかできない漫才を発明してほしいとアドバイスした。 どの論評も、芯をつきながら視聴者にもわかりやすく言語化し、厳しいながらも愛のある指摘で視聴者から高い共感を得ることに成功した。番組は、現在もTVerで配信中なので、ぜひ各コンビへの粗品の審査をみてほしい。 また、今回の審査で粗品がすごかったのは炎上を恐れない姿勢だろう。現在、賞レースの審査員は高い注目を受け、迂闊(うかつ)なコメントや点数をつければ、対象となるコンビのファンから大バッシングを受ける。どこか消化不良な論評も多い中で、粗品がズバリ核心をついたことで評価を受けることになった。

粗品の持ち味は『M-1』審査員では難しい理由

今回の審査が高評価を得た粗品は、多くのお笑いファンや識者から『M-1』の審査にぜひ出てほしいと、一気に注目されることになった。しかし、今年『M-1』で審査員をしても、粗品の持ち味は活かせないのではないかと考える。 理由として、今回披露した辛口の採点や論評はできない可能性が大きいからだ。 まず今回の賞レースは「新人」を対象にしたもので、関西における漫才師の登竜門である。荒削りなコンビが多く、ステップアップするための賞レースだ。 現に、昨年覇者の空前メテオは『M-1』では決勝に進出できていない。 今回、粗品は「新人賞」に標準を合わせ審査員を全うしていた。得点の低さは新人コンビゆえの完成度の低さを考慮したもので、論評も可能性がある後輩たちに向けてあえて辛口にしたのだろう。 一方で『M-1』は、数多い予選を勝ち抜いて決勝進出のコンビが決まる。『ytv漫才新人賞決定戦』より完成度もレベルも高い漫才師たちが勢ぞろいするのが『M-1』だ。 そう考えれば、今回のような辛口の採点や論評はできなくなるだろう。 実際、粗品は自身のYouTubeチャンネルの動画(『ytv漫才新人賞決定戦について』3月2日投稿)で「もし、M-1グランプリの審査員やった時はもうちょっとレベルが高いから、90以上は出るんやろうな」と自己分析している。この発言からも分かる通り、粗品自身も『M-1』の審査員に興味はあれど、かなり慎重になっているのは間違いなさそうだ。 今年中に『M-1』の審査員というのは、現実的ではない話だ。もう少し他の賞レースの審査を経験し、また芸人としてもより世間に認められレベルアップして、発言に重みを出す必要があるように感じる。
次のページ 
審査員として島田紳助、松本人志の領域に迫る存在
1
2
Cxense Recommend widget
あなたにおすすめ