
『窪塚愛流 1st写真集 Lila』(小学館)
基本的に教室の廊下側の席から中央後ろに座る神崎を見て、くすくすふわふわ笑っている。クラスのムードメーカーというわけでも、ステレオタイプなお調子者キャラというわけでもない。
どこか生々しい表情が印象的な道化師という感じ。極めて曖昧な雰囲気。存在自体が不安定に見える次元役に対して窪塚は、綱渡りでもするかのようにキャラ立ちさせる。教室の外、校内の廊下にたたずむと、やたら脚長な全身が目立つ。
モデルでもある窪塚は、自らのビジュアルからそのフォルムを取り出して、輪郭自体を際立たせているような独特なたたずまいがある。内面的にも外面的にも他とは違う。
同話では、御上にやり込められた神崎にピースした右手をあげて、助っ人したいと申し出る。実にチャーミング。役柄と演じる本人の特性が不思議と調合された、ほんとうに謎にキャラ立ちした魅力の人である。

『GO』(TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D))
ドラマ初出演は『ネメシス』(日本テレビ、2021年)でのゲスト出演だった。オレオレ詐欺に加担する青年を演じ、第2話でバイクに乗って後ろを振り返る表情が、役柄とあいまって危うげな存在感をぐらぐらさせていた。『顔に泥を塗る』(テレビ朝日、2024年)では、メイクに興味はあるが、自分の属性的に手が出ないと決め込むピュアな男子像を薄化粧のような透明感で演じた。
俳優デビューは14歳。父・窪塚洋介の関係性から豊田利晃監督に『泣き虫しょったんの奇跡』(2018年)のオーディションに誘われたことがきっかけ。同作で主演した松田龍平の少年時代を演じ、将棋に打ち込む役柄と比例する熱心な眼差しが、父同様に映画的俳優としての存在感を本能的に体現できる才能と感性を示した。
順当に出演作を重ねる窪塚愛流が、『御上先生』でさらに提示する存在の危うさ、不安定さは、乱暴な引用だけれど、窪塚洋介の鮮烈な初主演映画である名作『GO』の系譜にあると指摘してみたくなる。窪塚洋介が躍動させた剥き出しの痛快な暴力性が、『御上先生』の窪塚愛流にも同様に認められると言いたいわけではない。
そうではなく、彼は彼なりのポテンシャルを感じさせながら、平成初期に父が体現した映画の熱量を令和的なクールでまとめあげ、見る者の心をぐらぐらさせて、扇動することが面白いのだ。
<文/加賀谷健>
加賀谷健
コラムニスト / アジア映画配給・宣伝プロデューサー / クラシック音楽監修「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:
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