親とボードゲームをして育った子どもと、そうでない子の“大きな違い”。開発者が語る意外な効果
近年、ボードゲームの人気が高まっています。ボードゲーム専門店「すごろくや」の創業者である丸田康司さんによると、2020年にコロナ禍の巣篭もり需要で急激に売上が上昇し、その影響が落ち着いた後も順調に伸び続けているといいます。
「昔はボードゲームといえば、一般的に『人生ゲーム』や『UNO』くらいしかありませんでした。しかし今は歴史や化石の発掘などをテーマにした、知的な能力を発揮しながら楽しめるものや、『ナンジャモンジャ』などの語彙力や発想力が問われるものなど、新しいボードゲームがたくさん出ており人気が広がっています。知育のために子どもに遊ばせたいという親御さんも多いです」(丸田さん)
丸田さんは、「MOTHER(マザー)2」などのテレビゲームソフトの企画開発に15年間携わったあと、2006年に「すごろくや」を創業。ロシア発祥のカードゲーム『ナンジャモンジャ』の日本版を手がけて累計国内出荷150万個以上の大ヒットに導くなど、流通・販売だけでなくオリジナルのボードゲームの企画開発やイベント開催なども行いながら、「ボードゲームの総合商社」として普及に尽力しています。
丸田さんがボードゲーム専門店の経営者に転身した経緯や、子どもがボードゲームで遊ぶことで育まれる力などについて聞きました。
――テレビゲームソフトの開発者から、ボードゲーム専門店の経営者に転身したのはなぜですか?
丸田康司さん(以下、丸田):コンピューターゲームとボードゲームは、デジタルとアナログでまったく違うと思われがちですが、面白さの本質的な部分は変わらないと思っています。テレビゲームソフトの開発をやっていた当時も、面白いボードゲームから刺激を受けることが多くありました。
しかし、2000年以降テレビゲームの商業主義化が進みました。僕は「ゲームのパチンコ化」と呼んでいるのですが、確実に利益が出るかどうかが優先され、人気ゲームシリーズの2や3など、ナンバリングのタイトルばかり作られるようになり、新しい挑戦をすることが難しくなったんです。それでは仕事が面白くないし、むしろヨーロッパのボードゲームのほうがゲーム本来の凄みや面白さを体験できると感じるようになりました。
しかし、海外の面白いボードゲームを扱うのはマニア向けが多く、ファミリー層などを対象にした店はほとんどありませんでした。そこで、確かな知見を持って、もっと幅広い層にボードゲームの魅力を伝えたいという思いから「すごろくや」を立ち上げました。
――テレビゲームやスマホゲームと、子どもとの付き合い方について悩んでいる親御さんは多いですが、元開発者としてアドバイスはありますか?
丸田:一番注意していただきたいのは、「ゲームに遊ばされているかどうか」です。ゲームをする上で大切なのは、「自分の頭を使ってうまくやろうとすること」です。もしネズミが砂糖をほしがるようにボタンを押し続けているようであれば、問題のある状態だと判断していいと思います。
私が言うと意外かもしれませんが、頭を使う楽しいゲームであれば、テレビゲームでもスマホゲームでもいいと思います。むしろ親御さんも一緒に楽しむといいのではないでしょうか。「うまくいったね」と共に喜んだり、成長したりするのは、親子のいいコミュニケーションになると思います。
――子どもがボードゲームで遊ぶことで、どんな力が身に付くと思いますか?
丸田:論理的思考など、頭が良くなる効果を望まれる親御さんが多いのですが、実際には期待とは違うところが鍛えられるので、そこに気がつかなければ活かすことが難しいと思います。もちろん論理的思考なども伸びますが、ボードゲームで一番問われるのは社会性なのです。
ボードゲームの大きな特徴は、参加者たちが場を「小さな社会」と認識して支え合わなければできないことです。皆がルールや手続きを守ることで、楽しめる場を作っているのです。
――確かにコンピューターゲームは1人でもできますが、ボードゲームは無理ですね。
丸田:そうなんです、また社会性を身に付けることの中には、ゲームで負けそうになっても我慢して続ける忍耐力や、他人の勝利を尊重できるような情動の成長も含まれます。ルールを捻じ曲げてズルをすることと、ルール内で戦略を練ってゲームを有利に進めることの違いなども、楽しみながら少しずつ学べるといいですね。
しかし、「飽きた」とか「負けるのが嫌だからやめる」という身勝手な感情で場を壊してしまうのが子どもです。そこに気づいた上で親子で根気良く一緒に遊んでもらえると、社会性を育むことに活かしていただけると思います。
テレビゲーム開発者からボードゲーム専門店へ
ボードゲームで育まれる、子どもの力とは
