子供2人を抱えて離婚してしまった<シングルマザー、家を買う/序章>【後編】
<シングルマザー、家を買う/序章>
バツイチ、2人の子持ち、仕事はフリーランス……。そんな崖っぷちのシングルマザーが、すべてのシングルマザー&予備軍の役に立つ話や、役に立たない話を綴ります。
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ちなみに私の職業はフリーライターだ。フリーライターとは、一見カッコよく見られがちだが、新聞社に勤めてる記者とはワケが違う。エンタメ雑誌やファッション誌の読み物ページを基盤としている私には、普通免許(AT限定)と剣道初段(びっくりするくらい役に立たない)以外の資格がなにもなく、入社式ももちろんないので、いつからこの仕事についているというのさえあやふやなのだ。
この業界の人たちは“フリーライターなんて名刺を作ったその日から、誰でもなることができる”と話すが、本当にその通り。事件を起こせば、マスコミは面白おかしく私の肩書きを「自称・フリーライター」と書くだろう。それは仕方のないこと。だって本当に「自称」なのだから。
フリーライターの仕事は、教科書や辞書などの堅いものから、私が手がけるようなファッション雑誌や音楽雑誌などさまざま。ちなみにギャランティは、1ページを作るために下調べをして、取材をして、原稿を書いて提出して、1万円もらえれば万々歳。(小さな出版社の雑誌はその半額ということも……。)となると、20万以上稼ぐためには、20誌以上から1ページ以上の依頼をもらわなくては生活ができないのが現状。もちろん、毎月決まった出版社から依頼がくるわけでもない。前回の仕事依頼を受けてから3年以上経って「久しぶり~」なんて依頼の電話がくることも……。
この仕事は明日辞めても誰にも責められないし、出版社から仕事が来なければまったくの無収入となる本物の「自称・フリーライター」なのだ。それなのに私の手の中には娘と息子、肥満の猫、そして30年のローン……。あぁ、考えただけで不安定すぎる!
そんな限りなく不安定な仕事だからこそ、シングルマザーになることは恐怖以外、なにものでもなく、離婚した当時は、これから先、一体私がどんな風になるのか想像もつかなかった。
あぁ、髪の毛とかボッサボサで給料日も安定しないからパンのミミとか揚げてたべるようになるのかなぁ。でも、娘はラスクが好きだからなんとかなるか……とか、顔の右上に白い四角いシップみたいなのを貼って、やたら不幸な感じをかもし出すのかなぁ。でも、あれはあれで目の疲れがとれるからいいのか。とか、子供も母子家庭だから当然暗くなっていじめられるのかなぁ。でも、うちは子供がふたりともマイペースなB型だからなんとかなるかとか、今考えると“シングルマザー”というのを完全に“不幸のかたまり”にしか考えていなかったと思う。(基本はめちゃくちゃポジティブだけど)
でも、それは、まわりにシングルマザーがいなかったから、想像がつかなかっただけだと気付くのだが……。
東京郊外の団地で育った私の周りには、貧乏ながらも愛に溢れた家族がたくさん住んでいた。クラスメイト全員が団地に住んでいたので貧困の格差もほとんどなく、学校の裏にはマンガみたいに裏山が存在し、どこから見ても田舎なのに電車にのれば30分で新宿に着くというのびのびとした環境でぬくぬくと育ったからこそ、とくに焦りもなく、比較的のんびりした家庭が多かったと思う。だからこそ、“シングルマザー”というイメージが、テレビや雑誌などで見るようなパブリックイメージしかなかったのだ。
それに、マスコミがこぞって取り上げる“シングルマザー=虐待”、“シングルマザー=餓死”、はたまた“シングルマザー=場末のスナックで子供を家において夜に働くママ”みたいな極端なイメージがさらに私を困惑させた。
たしかに、父親が存在しないというだけで、経済力は減るし、一人で子育てをするストレスも増えるのも事実。でも、だからと言って、全員が虐待するわけじゃないし、餓死するわけじゃない。場末のスナック自体、シングルマザー全員を受け入れるほど大量に存在しないはずだ。それに、父親がいる家庭だってそういった環境になる可能性はあると思うのに、なぜシングルマザーだけがあんなに取り上げられてしまうのだろう。
私のまわりのシングルマザーは、朝のものすごく忙しい時間に「昨日さ~、うちにお金がなさすぎて泣いちゃったよ~」と自転車に乗りながらさらりと笑顔で報告してくるママや、イケメンの保父さんを意識しすぎてメイクの勉強をしだしたり、母子家庭だからこそいいものを与えてあげたいと今まで以上に仕事に励むママだったりと、パワフルで“面白い”ママばかり。みんな、大変だけど、心から楽しく育児と生活に立ち向かっている。
ときには寂しくて辛くて、家族が街に溢れる日曜日には外にでたくない。そんな日も、もちろん存在する。でも、子供の笑顔があるからこそ、毎日頑張っちゃうというシングルマザーたちを応援することができたら、そして、シングルマザーに対する偏見の目が少しでもなくなればという思いでこのコラムを読んでもらえたら嬉しいです。
世の中のシングルマザーと、その子供たちが幸せになることを願って。
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<TEXT/吉田可奈 ILLUSTRATION/ワタナベチヒロ>
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【吉田可奈 プロフィール】
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、音楽ライターを目指し出版社に入社。その後独立しフリーライターへ。現在は西野カナなどのオフィシャルライターを務め、音楽雑誌やファッション雑誌、育児雑誌や健康雑誌などの執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。座右の銘はネットで見かけた名言“死ぬこと以外、かすり傷”。Twitter(@singlemother_ky)
※次回更新は12月24日を予定しています。
子供を育てるには不安すぎるフリーランス

シングルマザー=かわいそう、って誰が決めた?
パワフルで面白いシングルマザーたち

- ママ。80年生まれの松坂世代。フリーライターのシングルマザー。逆境にやたらと強い一家の大黒柱。
- 娘(7歳)。しっかり者でおませな小学1年生。イケメンの判断が非常に厳しい。
- 息子(4歳)。天使の微笑みを武器に持つ天然の人たらし。表出性言語障がいのハンデをもろともせず保育園では人気者
吉田可奈
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、出版社に入社、その後独立しフリーライターに。音楽雑誌やファッション雑誌などなどで執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。長男に発達障害、そして知的障害があることがわかる。著書『シングルマザー、家を買う』『うちの子、へん? 発達障害・知的障害の子と生きる』Twitter(@knysd1980)
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『シングルマザー、家を買う』 年収200万円、バツイチ、子供に発達障がい……でも、マイホームは買える! シングルマザーが「かわいそう」って、誰が決めた? 逆境にいるすべての人に読んでもらいたい、笑って泣けて、元気になる自伝的エッセイ。 ![]() |