コスメの「防腐剤なし」はホントにいいの?“自然派”の落とし穴
皆さん、コスメに毎月どれくらいの金額をかけていますか? 1万円? 2万円? そしてその金額をかけた分だけの効果、実感していますか?
私たち消費者は、テレビや雑誌の宣伝文句を信用して商品を買うしかありません。そんな状況に一石を投じているのが、ブログ「かずのすけの化粧品評論と美容化学についてのぼやき」です。
化学の研究者が、ヘアケアやスキンケア商品の内容を解析して、その効果や値段感を評価してくれたり、ちまたに流れているコスメの常識の「嘘・ホント」を化学的見地に基づいて教えてくれています。
そのブログの管理者である、かずのすけさんにお話を伺ってみました。
――かずのすけさんは、ブログで「コスメメーカーの宣伝文句の嘘」を暴いてくれたり、商品の原材料を解析してくれたりと、消費者の味方をしてくれる化学者というイメージですが、本業は何をされているのでしょうか?
かずのすけさん(以下、かずのすけ):今はフリーランスで化粧品開発のコンサル業や本の執筆をしながら、博士号を取得するために国立大学の大学院に通っています。大学生のときから化学、特に界面活性剤の研究をしていました。現在は洗剤・洗浄科学と消費者教育を専門にしている教授の下で、化粧品リスクの研究を続けています。
――本物の化学者さんなんですね。ところで私は20年来の無添加フェチなのですが、やっぱり一番気になるのは防腐剤です。
かずのすけ:防腐剤フリーの化粧品は最近多いですね。僕も『余計なものは入っていない方がいい』と思っているので、無添加志向に近いかもしれません。でも防腐剤に関してはほとんど気にしていないんです。
まず、パラベンやフェノキシエタノールといった防腐剤は、50年以上化粧品に使われてきた歴史がありますが、それで大きな健康被害の問題が起きたという記録は僕が調べた限り見当たりませんでした。
――なんとなく、パラベンは悪者のような気がしていました。
かずのすけ:コスメに入っているパラベンはほんの0.2~0.3%です。
引き替えに化粧品の主成分に使われるエタノールや多価アルコール類などの原料は、いっぱい入れれば防腐剤の代わりになります。でも『防腐剤フリー』を謳いたいために代わりにこれらの成分を使おうとすると5~10%程度は必要です。
しかし、これらはとても刺激が強くて肌の弱い僕は使えません。
このように、流行に乗っ取った結果、逆に肌によくない化粧品になっていることもあります。
――防腐剤不使用だからお肌に優しい、ということではないんですね。
かずのすけ:むしろ逆のことも多いです。また防腐剤を入れないなら、使用期限があるはずです。化粧品には決められた期限、安全に使える証明をしないと売ってはいけないという法律があるんです。
だから防腐剤フリーといっても、必ずそれに変わるものを使っているはずです。そういう意味で、期限が書いていないのに防腐剤フリーと謳っているものはリスキーなものが多いですね。
●かずのすけさんオススメのアイテム例
ティヤアルガンクレンジングオイル(ティヤ化粧品)
主成分がオイルなので防腐剤を入れなくても腐らない
http://www.tiyya.jp/index.html
――でも今まで、化学のプロがこうした情報を表に出してくれなかったのはなぜなのでしょうか。
かずのすけ:おそらくコスメについて最も詳しいのはメーカーの研究者の方だと思います。でも彼らが得た知見は企業のものになるので、自分で情報発信ができないんですよね。それと、企業が発表する化粧品に関する論文は、10年や20年前に研究が終わった古いものなんです。
最新の研究については情報を盗まれると困るので出さないんですよ。
●かずのすけさんプロデュースのアイテム例
セラキュアローション
防腐剤はより敏感肌向けのフェノキシエタノール採用
http://cores-ec.com/SHOP/k1a.html
――私たちは、広告やCM、情報源の怪しいサイトでしか、情報を得られないんです。いったい何を信じたらいいのかわかりません。
かずのすけ:僕もこの仕事を始める前、自分がアトピー体質で肌が弱いことや、ブリーチをして髪を傷めたこともあっていろいろ調べたのですが、やはりきちんとした情報は得られませんでした。美容師さんやショップの店員さんは化学のプロではありませんからね。専門にしている人間からすると、ツッコミどころがいっぱい。
だから僕のように欲しい情報が手に入らなくて困った人も多いはずと思い、『それなら自分で作ればいいじゃない』ということで作ったのがこのブログです。
――企業PRの匂いを感じない信頼感が、かずのすけさんのブログの人気の理由だと思います。
かずのすけ:それはとても嬉しいですね。ひとつ言えるのは、ブログでは『嘘をつかない』ということを信条にしています。もちろん間違えることや、忘れてしまうことはあります。でも嘘はつかないし、聞かれたことにはできる限り正直に答えています。僕のブログのコメント欄は承認制になってはいますが、実は明らかに悪意あるコメントとスパム以外はすべて承認して載せているんですよ」
※次回は、界面活性剤は悪いものなのか? 美白はするべき? といった美容のウソホントを伺います
●ブログ「かずのすけの化粧品評論と美容化学についてのぼやき」
著書『間違いだらけの化粧品選び 自分史上最高の美肌づくり 』に続き、新刊が2016年2月中旬~下旬に発売予定
<TEXT/和久井香菜子>
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パラベンフリーがいいとは限らない

コスメメーカーは最新の研究を明かさない
和久井香菜子
ライター・編集、少女マンガ研究家。『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)が好評発売中。英語テキストやテニス雑誌、ビジネス本まで幅広いジャンルで書き散らす。視覚障害者によるテープ起こし事業「合同会社ブラインドライターズ」代表
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『間違いだらけの化粧品選び 自分史上最高の美肌づくり』 美容・化粧品業界から反響続々!時間もお金もかからない、肌本来の美肌機能を呼び起こす。人気ブログ待望の書籍化!日本ブログ村ランキング、ヘアケア、スキンケア各部門第1位!! ![]() |