小泉今日子、50歳。ブレない強さはどこからくるのか
小泉今日子の魅力とは、一体何なのでしょう。
失礼ながら、歌が上手なわけでも、味のある芝居をするわけでもない。それでもアイドル時代の80年代から、ずっと第一線のビッグネームでありつづけてきたキョンキョン。
事実、雑誌『MEKURU VOL.7』で特集が組まれると、その号は早々に売り切れ。昨年発売された『小泉今日子書評集』も話題を呼びました。
朝ドラ『あまちゃん』からの“アイドル批評”プチブームもあり、その名前が再びクローズアップされ始めているように思います。
そんな中、発売された『黄色いマンション 黒い猫』。
雑誌『SWITCH』の連載「原宿百景」からのセレクションに加え、書き下ろし1篇を加えたエッセイ集です。小さいころや学生時代の思い出から、50歳を迎えての心境に至るまでがつづられています。
とはいっても、特別ハデな出来事が取り上げられるわけではありません。読者を驚かせたり、大笑いさせたりする話は全くない。それとは逆に、普段通り過ぎて行ってしまうような些細な光景や心情を、さりげなくすくい上げていく。
たとえば、デビュー間もなく不安に押しつぶされそうになりながら、ボイストレーナーのコウノ先生の部屋で一緒にお昼ごはんを食べるシーン。
<テレビがあってコタツがある普通の茶の間で、炊きたてのご飯とお味噌汁と、お漬け物や明太子や葉唐辛子や焼き鮭といった気取らないおかずが並んでいて、なんだかすごくそれに安心して泣きたいような気持ちになる。
(中略)
歌はなかなか上手にならないけれど、もっと大事なことをこの家に教えてもらった。>
(嵐の日も 彼とならば)
アイドルとして成功するのも大事だけれども、まずひとりの人として肯定してもらえることのありがたさ。それを早くからごくごく普通の食卓の中に見出す視線に、小泉今日子の落ち着きがあるのでしょうか。

なんでもない日常に、泣きそうになる
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『黄色いマンション 黒い猫【特典付き】』 1982年のデビュー以来、歌手、女優として、映画、舞台、テレビ、CM、そして執筆と活動の幅を広げながら、そのすべてを支持され、時を経てもぶれることのない圧倒的な存在感を放つ、小泉今日子。 本書は、彼女が十代の頃から親しみ、かつては住んでいたこともある原宿の町を再び歩き、変わり続ける街並に彼女の半世の思い出を重ねながら、9年間にわたって書き綴った自伝的エッセイ集です。 ![]() |
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『海からの贈物』 女はいつも自分をこぼしている。そして、子供、男、また社会を養うために与え続けるのが女の役目であるならば、女はどうすれば満たされるのだろうか。い心地よさそうに掌に納まり、美しい螺旋を描く、この小さなつめた貝が答えてくれる――。有名飛行家の妻として、そして自らも女性飛行家の草分けとして活躍した著者が、離島に滞在し、女の幸せについて考える。現代女性必読の書。 ![]() |