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『死すべき定め』いい医者とは?いい最期とは?全米ベストセラーの素晴らしい一冊

「良い医療とは何ですか?」と訊かれたら、あなたならどう答えるでしょう。難度の高い手術をいくつも成功させてきたスゴ腕の名医や、最先端の治療、薬剤が思い浮かぶかもしれません。それによって、人類の寿命が劇的に伸びたことは確かです。

死 それでも人間は例外なく死にます。どれだけ医療が進歩し続けたとしても、死そのものは決してなくなりません。後回しにする時間は稼げても、必ず向き合うときがやってくる。

死を前にしても口紅とお気に入りの服を



 現代の医療は、この問いを真剣に考えてこなかった。そう指摘するのが、ハーバード大医学部教授のアトゥール・ガワンデ。医師であり、雑誌『New Yorker』のライターでもある氏が2014年に発表した『Being Mortal』は、全米で75万部のベストセラーに。

 そして、このたび『死すべき定め――死にゆく人に何ができるか』(訳・原井宏明)というタイトルで日本語版が発売されました。

 すでに老後の不安でいっぱいだという20代や30代の心にも響く一冊かもしれません。

死すべき定め

日本でも、早くも話題に…

 ガワンデは、医療の目標とは<よい死を迎えさせることではなく、今際の際までよい生を送らせること>だと言います(< >内は同書より引用、以下同じ)。

 単なる延命のために苦痛や不自由を強いるのではなく、不快な思いを取り除き、意志のある自律した人間として生をまっとうさせる。それこそが医者のなすべきことだと考えるのです。

 たとえば、入院中でも口紅をさし、お気に入りの服を着る老女。チョコレートアイスを食べながらフットボールを観て、知人にメールを送れる状態を望んだガワンデの父。それを自分で考え、判断して選んだという事実が大切なのですね。

死んでゆく人の役割とは



 しかし、現代の医療ではそうした自由を認めるよりも、確実に死を遠ざける処置の方が優先されてしまうといいます。大きな手術や辛い副作用を伴う治療で、数字だけの生存期間は延びるかもしれません。しかし、それを“生きた”と呼んでもよいのだろうか……。

 そこには“人間とは何か”という大きな問いが欠けているのです。抗生物質の出現や、科学的な施術が当たり前になったことで、治せない病気はないような気になり、医師はヒーロー扱いされてしまう。

アトゥール・ガワンデ

著者のアトゥール・ガワンデ医師はインド系アメリカ人 Courtesy of the John D. and Catherine T. MacArthur Foundation(CC BY 4.0)

 しかし、そんな劇場型の医療こそ、私たちが直面する困難なのではないでしょうか。

<人間の欲求について理解するよりも、己の技術的腕前を磨くことをより大切にしている人たちの手に、私たちの運命を委ねるという実験>にすすんで参加してしまう悲劇。そこで消えつつあるのが、死への畏怖なのかもしれません。

<現代のハイテク社会は、社会学者の言う「死にゆく者の役割」が臨終で果たす重要性を忘れている。死にゆく人は記憶の共有と知恵や形見の伝授、関係の堅固化、伝説の創造、神と共にある平安、残される人たちの安全を願う。>

 だからといって、ガワンデは安易に安楽死をすすめているのではありません。生をまっとうしようとする気力を奪う手術や治療をしないことと、苦しみから解放するために死を手繰り寄せることは全く異なるのです。

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末期ガンの女性が最後にしたこと

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死すべき定め――死にゆく人に何ができるか

現役外科医にして「ニューヨーカー」誌のライターである著者が描く、迫真の人間ドラマ。
人生の終盤をよりよくするために奔走した人々のエピソードが圧倒的な取材力と構成力で綴られた本書は、読む者に自らの終末期の選択について多くの問いを投げかけるだろう。
終末期をどう生き、最期の時をどう迎えるのか。私たちは豊かに生きることに精いっぱいで、「豊かに死ぬ」ために必要なことを、こんなにも知らない―。




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