「サンタはアマゾンと契約している」。娘の夢を守るためついたウソ【シングルマザー、家を買う/60章】
<シングルマザー、家を買う/60章>
バツイチ、2人の子持ち、仕事はフリーランス……。そんな崖っぷちのシングルマザーが、すべてのシングルマザー&予備軍の役に立つ話や、役に立たない話を綴ります。
『シングルマザー、家を買う』を読んでいただいているみなさまへ。
息子が4月から養護学校へと進学することが決定しました。学校が決まるまでの面接や手続き、そしてなぜか忙しくなってきている仕事のため、勝手ながら、連載を少しの間、お休みしておりました。
その間、問い合わせメールをいただき、とても驚くとともに、心から感謝しています。無事、息子の小学校も決定したので、これからはマイペースに更新して行けたらと思っています。よろしくお願い申し上げます!

我が家にも、聖なる夜にサンタはやってくる。
去年、小学2年生だった娘は画用紙にサンタの絵を描き、「サンタさんだいすき」と媚びを売ることでプレゼントを引き寄せていたが、小学3年生にもなった娘の様子は今までとは少し違う。どうやら、同じクラスの男子が「サンタは親だ」と言い出したようなのだ。
私も小学4年生のクリスマス前に、“もしかしてサンタは親なのでは”と疑い始め、父親に「サンタってお父さんなの?」と聞くと、何の迷いもなく「天袋開けてみろ」と言われ、天袋から「SHOW by ショーバイ」のボードゲームが出てきた瞬間のショックを今でも忘れられない。疑念が確信に変わった時、ひとつの時代が終わった気がしたのだ。“あぁ、もうわたし、子どもじゃいられない”と4年生ながらに思ったのを覚えている。
そして、わが娘にもそんな時期がとうとうやってきてしまった。
ある日、夕飯を終えて一息ついていると、娘がニヤニヤしながら話しかけてきた。
「ねぇママ。サンタって、ママなの?」
急に心臓がドクドクと鳴り、この答えはどうしたらいいのか頭の中で必死に探してみたものの、いい答えが見つからない。でも、まだ娘は3年生。夢を壊してはいけない。そう咄嗟に思った私は、「ち、ちがうよ」と裏返る声で答えていた。
すると娘はすかさず、「じゃぁ、どうやってプレゼントを持ってくるの?」と聞いてきた。うう……。ここで具体例を出せとは、手ごわい相手だ。私は絞り出すように言ってしまった。
「……あ、アマゾンにお願いしてるんだよ!」
娘は私のその言葉を繰り返した。「アマゾン……?」と。
我が家はアマゾンのプライム会員であり、買い物はほとんどそれを利用する。毎日のように宅急便が届き、宅配便のお兄さんたちはすでに全員が顔見知り。娘にとってアマゾンは、日常とは切っても切れない存在になっているのだ。
そのお兄さんたちとサンタが上手くつながらずに、頭に“?”が浮かんでいる娘を見て、“よし、大人の言葉でたたみかけるならいまだ!”と卑怯な手に出ることにした。なんとなく難しい言葉で言いくるめようとしたのだ。夢を守るためにはそれしかない。
「サンタはね。世界中の子供にプレゼントを渡すために、宅配業者のアマゾンと外部契約しているの。いわゆるアウトソーシングね。だから宅配便のなかにプレゼントが入っていて、それをママが受け取り、夜のうちに枕元に置いておくんだよ。ね! わかったね! 以上!」
「がいぶ……はっちゅう? あうと……そーし? ……?」
娘はポカーンとした顔しているが、もうこれ以上の説明は私にはできない。もはやサンタが私だと打ち明けてもいいのではとも思ったが、なぜか夢を守らなければいけないと意地になり、後に引けない状態になってしまった。
娘はまだ納得していないようだったが、とりあえず、サンタはいると思い込んだようだ。よしよし、まだピュアだ。かわいいもんだ。そう思ったのもつかの間、また娘が話しかけてきた。

ママはサンタクロース?
「サンタはアマゾンと契約している」説

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