●連載「ファッション誌が答えてくれない相談」40 by小林直子●
最近、幅広のベルトがたくさん売られていますが、どうやって使っていいかわかりません。使い方を教えてください
衣服のシルエットがビッグになるにつれて、ベルトも幅が広くなってきました。これは当然と言えば当然で、全体のバランスをとるために、ベルトが大きくなったのです。
しかし、この前のタイトのシルエット(それは大体2000年以降の話なのですが)のときに20代を過ごした方の中には、ベルト通しを通す以外のベルトの使い方がわからない方も多いだろうと思います。

画像:WEAR
ベルト通しを通すベルトは、大体スカートやパンツがずり落ちないようにするためか、トレンチコートなどについている共布の付属のベルトでしょう。最近出てきた幅広ベルトの多くは、ベルト通しには通りません。ウエストをマークするためのベルトなのです。
特にルネッサンス期以降、西洋の衣服の歴史で、女性にとってウエストは常に重要なものでした。ナポレオン第一帝政時代のエンパイアドレスや、1920年代のチャールストンドレスを除いては、ほとんどの時代、女性のスタイルはコルセットにより胸郭からウエストにかけて強調されてきました。
ボリューミーなスカートのドレスとコルセットはいつもセットというのが西洋の女性服です。

ウエストの細さは、男性にはない特徴ですから、「女性的である」ことを意味します。また、年をとるとどうしても太ってきますから、細いウエストは若さの象徴でもありました。
女性らしく、そして若く見せるために使われたのがコルセットなわけですが、太いベルトやサッシュはそのコルセットの名残でもあると言えるでしょう。
つまりそれを用いることによって実現できるのは、「女性らしいこと、そして若く見えること」なのです。
では幅広ベルトやサッシュをどう使うか、についてです。
実は簡単で、何にでもベルトをしていいのです。
ずどんとしたニットやカットソーのワンピースの上からでも、ジャケットやコートの上からでも構いません。目的はウエストを強調することだけですから、ベルト通しがあろうがなかろうが、どうだっていいのです。

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もっと言うと、実際にはウエストがそれほど細くなくても、そこに太いベルトをすることによって、なかったウエストは作られます。
基本的にベルトをするのは、タイトなシルエットではなくビッグなシルエットのワンピース、ジャケット、コート、セーター、シャツやブラウスの上からです。なぜならベルトを使うことによって、ブラウジングという、腰回りの上にゆったりとした膨らみを持たせるためです。
けれども、ウエスト強調のためでしたら、タイトなニットのワンピースに太いベルトをしても構いません。