『アンナチュラル』主題歌の米津玄師がブレイク中! “ニコ動”出身の本格派
いま話題のドラマ『アンナチュラル』(TBS、金曜夜10時。石原さとみ主演)。
その主題歌「Lemon」を歌っている米津玄師(よねづ・けんし、27)をご存知でしょうか? 昨年11月リリースのアルバム『BOOTLEG』が第10回CDショップ大賞に選ばれ、いま大注目のアーティストなのです。
ニコニコ動画に自作曲を投稿している時代から知る人ぞ知る音楽家だったそうですが、DAOKO(21)とのデュエット曲「打上花火」の大ヒットでスターダムにのし上がりました。
新しい音楽が売れにくい時代にあって、どうして彼の曲が大きな支持を得ているのでしょう。いくつかのトピックに分けて考えてみたいと思います。
といっても、カラオケマシンで高い点数が出るようなうまさではありません。歌詞のキャラクターに微妙な表情を与えられる、そういう声の使い方が上手なのです。
たとえば、「LOSER」の<アイムアルーザー どうせだったら遠吠えだって いいだろう>というサビ。これを皮肉っぽくもなく、かつ熱くなり過ぎもしないトーンで歌っているのがいい。
そして「打上花火」でDAOKOと掛け合いをするフレーズでは、さびしげながら包容力を感じさせます。
<パッと花火が 夜に咲いた 夜に咲いて 静かに消えた>という文字だけでは伝わらない情報を歌声が補っている。その意味で歌がうまい正統派のボーカリストなのだと思うわけです。
参考例・ハンク・ウィリアムス「I’m so lonesome I could cry」
詞の意味などを考察する熱心なファンも多いのですが、ここでは音楽に乗った言葉の心地よさに注目しましょう。
一見すると字余りで歌い切るのは無理に思われる文字列が、彼にかかると軽やかにステップを踏み出すのですね。語句のアクセントや区切りが自然なので、音符にはめ込んだだけでなく、意味が通じる文章として聞こえてくるのです。
特に「春雷」が圧巻です。言葉を細かく刻んだり、引き伸ばしたり自由自在。
歌い出しの<現れたそれは春の真っ最中 えも言えぬまま輝いていた>と、サビの<言葉にするのも 形にするのも そのどれもが覚束なくなって>を比べるとよく分かると思います。ビートのパターンを強調する部分と、幅の大きなメロディを聞かせる部分のメリハリが効いています。
これも言葉の中にあるサウンドを鋭く感じ取っているからできることなのでしょう。
参考例・真心ブラザーズ「サマーヌード」
①歌がうまい
②歌詞の言葉が気持ちいい
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