夫が北海道の農村に左遷!“リアル北の国から”生活の末、東京育ち女性を待っていたのは…
都会暮らしの経験しかない人がいきなり地方での田舎暮らしを強いられたらどうなるのでしょうか? 言葉こそ通じますが、環境の変化でいえば海外移住と大差なく、大きなストレスを抱える人も多いようです。

生まれも育ちも東京という月野澄香さん(36歳・仮名・専業主婦)は結婚後もコールセンターの仕事を続けていましたが、5年前、食品メーカーに勤める夫が突然、北海道の子会社に出向を命じられることに。
以前から上司との折り合いが悪かったそうで、左遷同然の辞令だったようです。
しかも、赴任先は道内でも札幌から離れた農村部の小さな町。聞かされた時は、ショックのあまり一瞬言葉を失ったといいます。
「当時はまだ子供がいなかったこともあり、頭には“離婚”の2文字が浮かびました。『私は絶対に行かないからね!』と言うつもりでしたが、夫は今まで見せたことがないほど憔悴しきった表情で、『ごめん……。北海道には俺一人で行くから』と謝られてしまい、何も言葉をかけられませんでした」
とはいえ、「私も一緒に行く!」と即答できる状況でもなかったとか。
「結局、答えは出ませんでしたが夫のことは大好きでしたし、不満も特になかったので一週間悩み抜き、仕事を辞めて北海道に行くことを夫に伝えました。けど、田舎暮らしに耐えられなさそうなら1人で東京に戻って、単身赴任してもらおうと考えていました」
そんな彼女を待っていたのは一面の銀世界。社宅として一軒家が用意されたそうですが、道路から玄関までは雪が積もっており、「最初の雪かきで心が折れかけました(笑)」と振り返ります。
「最寄り駅(無人駅)までは車で20分以上かかるうえ、電車は1時間に1本。家も駅近のマンションで、ほぼ5分おきに電車が来ていた東京とは大違い。周辺にはエゾシカやキタキツネも現れるし、頭のなかでは『北の国から』のテーマ曲がずっと流れていました」
徒歩圏内にはコンビニも飲食店もなかったそうですが、車で15分も行けば大型スーパーや病院もあり、「不便でしたが、慣れたらどうってことありませんでした」と田舎暮らしにも順応。幸運なことに近所には同世代の家族が数世帯住んでおり、東京ではまったくなかったご近所付き合いもするようになったとか。
「同じ日本なのに時間軸が東京とは全然違うんです。すぐに飽きるかと思いましたが、ご近所さんの影響で手芸など新たな趣味に目覚めちゃったりして、こういう暮らしも悪くないなって」
しかも、田舎暮らしは健康面でも大きな変化をもたらします。
「子供のころから悩んでいたアトピーが治ったんです。これは本当に嬉しかった。田舎パワー恐るべしって思いました」
夫も同僚や上司に恵まれ、残業がほとんどないので夫婦で過ごす時間も増えたそうです。結果、出向翌年には長男を出産。このころには夫婦の間で、「このまま北海道に住みたい」という気持ちが大きくなったそうです。
「夫の気持ちを知った出向先の社長さんも『ウチに必要な人材だから残ってくれ。親会社には私から直接頼んでみるから』と掛け合ってくれて、転籍を認めてもらったんです。それを機にマイホームを購入しました」
ちなみに自宅は5LDKの一軒家。テニスコートほどの広い庭付きで2700万円というから驚きです。
「リビングには暖炉もあるし、住環境だけは完全にセレブ。格好はいつもジャージ姿ですけどね」
そう笑顔で話す姿は、すっかり道産子。2年前には次男も授かり、週末には近くの温泉を巡ったり、庭でバーベキューを楽しむなど家族4人で北海道の田舎ライフをすっかり満喫している様子です。
一時は離婚も考えた旦那さんの地方出向ですが、「別れなくて本当によかった」としみじみ語る月野さん。きっかけは左遷同然の出向だったのかもしれませんが、そこで手に入れたのは幸せ。人生、何があるかわからないものです。
―シリーズ「人生の転機、上がったり下がったり」vol.3―
<TEXT/トシタカマサ ILLUSTRATION/ただりえこ>

写真はイメージです(以下同じ)
東京生まれ東京育ちが“リアル北の国から”生活


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