今回送られてきたのし梅は「佐藤屋」ののし梅である。
のし梅を製造している会社は数あるが、今の形状の、のし梅の元祖はこの「佐藤屋」だそうだ。
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乃し梅本舗 佐藤屋 高島屋販売ページより http://www.takashimaya.co.jp/shopping/food/0400019813/
元祖として梅の品質には相当こだわっているようで、梅好きじゃなくても、美味いと感じるのも頷(うなず)ける。
また佐藤屋は「手づくり」にもこだわっているという。
「のし梅」と言うぐらいだから、ローラーなどで「のされてない梅」を薄くのして行く作業を想像してしまうが、なんと、のし梅はのされてないのだ。
正確には「圧力をかけてのす」作業はなく、枠のついたガラス板に梅を練りこんだ寒天を流し、固まった後乾燥させているのが、佐藤屋の、のし梅である。
それに「のしてないじゃん」と言うなら、まずメロンパンあたりにケンカを売っていかなければいけない。
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乃し梅本舗佐藤屋ブログより http://satoya-matsubei.com/blog/2013/07/01/
しかし、機械でのす作業なしで、この均一な薄さののし梅を作るのは相当難しいはずである。ホームページで「当社自慢のこだわりの職人」の手づくりと謳(うた)っているのは伊達(だて)ではない。
老舗には、一本キメ打ちで、昔ながらの菓子を作り続けるところと、新製品を作ったり、現代風のアレンジを加えるところとに分かれるが、佐藤屋は後者である。
のし梅の他にも、洋菓子や、サッカーチーム「モンティディオ山形」をイメージした和菓子、芸術祭「山形ビエンナーレ」用に「うやむや」という非常にいい名前の菓子を製造していたりするようだ。
のし梅に関しても、生チョコにのし梅を乗せた「たまゆら」という菓子が発売されている。
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生チョコにのし梅を乗せた「たまゆら」乃し梅本舗 佐藤屋 高島屋販売ページより http://www.takashimaya.co.jp/shopping/food/0400019813/
生チョコにのし梅を乗せた、と一口で言ってしまうと「若い女が好きそうなスイーツにのし梅乗せればいいっぺ」みたいな「なんでも美少女に擬人化すればいい」のような雑な感じを想像してしまうが、この「たまゆら」の生チョコは、バターを使わずに寒天と白餡で作られた、特製の和風生チョコである。当然のし梅にも合うだろう。
また、チョコの上にのし梅が乗っているビジュアルもいい。
のし梅は、味も良いのだが、やはり見た目が良い。竹の皮をはがして、あの美しい琥珀色の板が出てくるとテンションがあがる。
よく今まで、縦線を何本が引いたものに「のし梅」って描いてたな、と思う。
<文・イラスト/カレー沢薫>
【カレー沢薫(かれーざわ・かおる)】
1982年生まれ。漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』で漫画家デビュー。主な漫画作品に、『
ヤリへん』『
やわらかい。課長 起田総司』、コラム集に『
負ける技術』『
ブスの本懐』『
やらない理由』などがある