話せない息子についた診断名に手が震えた。表出性言語障害って何?<発達障害のリアル>
「表出性言語障害」ってなんだ?
そこには、言葉は理解できても、自分で言葉を発することができない障害と書かれてあった。その分、ジェスチャーなどで物事を伝えようとするのだ。いわゆる、コミュニケーション障害の一つだという。
あ、ぽんちゃんだ。
「これ、捨てといて」「スプーン、持ってきて」という言葉はわかってその行動がとれても、自分から何も発することはできない。発することができる言葉は、「あ」と「じ」だけ。なぜか、この2文字だけははっきりと話すことができる。はっきり言って喃語(乳児が発する意味のない声)以下である。でも、この障害なのであれば納得ができる。こんな障害があるのだ。でも、その原因は解明されていないという。だから、改善する方法もわからない。
いつか、ぽんちゃんはしゃべれるようになる。
いつか、ぽんちゃんと毎日の話ができる。
ぽんちゃんは、自分ひとりで買い物ができる。
ぽんちゃんは、ほかの子と同じ。ほかの子と、同じように生活ができる。
……あれ、出来ないの?
今まで、障害名がついていないばっかりに、どこか持っていた希望。ぽんちゃんは、話すことはわかっているから、ぽんちゃんもいつかは話すことができるという期待。でも、その希望が一切奪い取られた気がしたのだ。たったひとつ、障害名がついただけで。
そのとき、藁(わら)にもすがるおもいで電話をかけたのは、自閉症のレイ君のママだった。
<文/吉田可奈 イラスト/ワタナベチヒロ>
【登場人物の紹介】
息子・ぽんちゃん(8歳):天使の微笑みを武器に持つ天然の人たらし。表出性言語障がいのハンデをもろともせず小学校では人気者
娘・みいちゃん(10歳):しっかり者でおませな小学5年生。イケメンの判断が非常に厳しい。
ママ:80年生まれの松坂世代。フリーライターのシングルマザー。逆境にやたらと強い一家の大黒柱。吉田可奈
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、出版社に入社、その後独立しフリーライターに。音楽雑誌やファッション雑誌などなどで執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。長男に発達障害、そして知的障害があることがわかる。著書『シングルマザー、家を買う』『うちの子、へん? 発達障害・知的障害の子と生きる』Twitter(@knysd1980)
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