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生活保護から抜け出した女性が語る「“働きたい”とはずっと思っていたけど…」

 数回に渡って貧困に陥った女性を紹介してきたが、今回は、うつ病、自殺未遂、生活保護の受給など壮絶な半生の自伝エッセイ『この地獄を生きるのだ』の著者・作家で漫画家の小林エリコ氏、女性の貧困問題を数多く取材してきたノンフィクションライターの中村淳彦氏に貧困の背景について語ってもらった。

オンナの貧困は自己責任か?

中村:男性と女性では、貧困に陥る傾向が違います。あくまで僕の主観ですが、男性の貧困者の場合、コミュニケーションが不得意な人が多い印象。女性の場合、コミュニケーション能力が高く、ごくごく普通に生きてきたような人でも貧困に陥ってしまう。 小林:普通に働いて、普通に生きることすら困難な時代ですね。
激務

※写真はイメージです

中村:ひと昔前は若い頃に水商売や風俗で荒稼ぎして、年齢を重ねても夜の仕事で自分の生活程度は稼げていた。しかしいまや学歴も資格もなく、親兄弟とも疎遠で、セックスワークも門前払いみたいな。中間層が普通に風俗で働きだしたので供給過剰ですね。 小林:貧困に陥る原因すべてを自己責任とは言い切れませんよね。 中村:雇用でしょう。最低賃金に近い金額で女性を働かせている。普通に働いても生活ができない。特に厳しいのは介護職や保育、自治体の臨時職員など、公的な力が及ぶ産業です。「国は女性を貧困に固定させたいのか」と疑うほど徹底している。小林さんは著書でご自身が生活保護を受けて、再生するまでの体験を書かれていますよね。 小林:私は短大を卒業後、マンガ雑誌の編集プロダクションに入社したのですが、一日12時間労働は当たり前、月給12万円という労働環境でした。社会保険もないし、残業代も支払われなかった。 中村:小林さんが社会人になった’90年代後半はブラック労働の全盛期。当時は悲惨でしたね。劣悪な労働環境は今もあるものの、ブラックという言葉が生まれたり、人手不足が深刻になったりで、この数年でだいぶ改善されたと思う。 小林:私は高校時代から精神科に通っていたのですが、過酷な労働環境で心身共に病んでしまった。やがて自殺未遂を繰り返すようになり、働けなくなりました。 中村:小林さんはどんな経緯で生活保護を受けたのですか? 小林:通っている病院のスタッフから勧められました。はじめこそ抵抗はなかったのですが、生活保護を受けていることに負い目を感じた時期もありましたね。精神科のデイケアでも「ナマポなんでしょ」って言われた。生活保護を受給していても決して贅沢はできない。私が東京都からもらっていた生活保護費は月12万円ほど。日々の生活は送れても家電が故障したら修理も買い替えもできません。お金がないから友達に会うこともままならない。そんな自分に嫌気がさしたことがあります。
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社会保障制度の利用は労働市場に戻る手段
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