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生活保護から抜け出した女性が語る「“働きたい”とはずっと思っていたけど…」

社会保障制度の利用は労働市場に戻る手段

中村:真面目な人ほど「生活保護は恥ずかしい」という意識が強い。一方で生活保護を受けながらこっそり副業をして、要領よく生きている人もいる。少なくとも自分の収入が最低生活費に届いていない時期には、生活保護を含む社会保障制度をどんどん利用して、苦しさを軽減したほうがいいですね。 小林:まさに。また、困窮しているときは判断力も鈍っているので、行政の手続きにはソーシャルワーカーなど支援者と一緒に行くのがスムーズだと思います。 中村:小林さんは、どのように生活を立て直したのですか? 病院小林:通っていた病院の待合室に精神障害の啓発などを行っているNPO法人が出している雑誌が置いてあって、編集者として雇ってもらえないかと直接、電話をしました。後日、マンガ編集の仕事を依頼されて、最初は無給のボランティアでしたが、やがて非常勤雇用で働くようになりました。10年ぶりの仕事です。それまでも「働きたい」という気持ちは、ずっと持っていましたね。「生活保護は働かなくてラクでいい」と揶揄されますが、朝起きても行くところがない、つまり社会での所属先がないことがなによりツラい。 中村:小林さんの場合、それまでのキャリアを生かして、自分ができることに飛び込んだことが功を奏したのだと思います。もちろんハローワークに通って就職活動をするのも王道です。しかし40代の女性は一度仕事をやめてしまうと、学歴もキャリアも認められなくなってバイトの面接すら全部落ちる……という話も珍しくありません。 小林:私の場合、精神的な障害もあるので「精神障害者は働けない」と言われたことがあります。知的障害、身体障害に比べて精神障害者は「こわい」というイメージが先行して、企業が採用をためらうことも多いようです。今は行政の就労移行支援も増えてきていると言えますが、情報が行き届くための制度は不十分に思えますね。 中村:国や行政が女性を貧困に誘導しているのが現実なので、もう自己防衛しかない。社会の動きを読んで自分が搾取されない職種を選ぶことが大事です。そして低賃金の時間労働収入だけに頼るのではなく、賢く副業をするのも生き延びるための策といえます。 小林:今の生活も決してラクとはいえませんが、経済的な自立が精神的な回復につながったのは大きいですね。今は仕事をして家賃も払える、週末には銭湯に行けるし、たまに友達と飲みに出かけられます。以前のように「死にたい」と思うことも少ないので、地獄からは抜け出せたと思っています。 中村:非正規雇用の問題やうつによる離職などは男性にとっても対岸の火事ではない。自己責任論で切り捨てずに、官民問わずセーフティネットを充実させていくことが課題ですよね。 【小林エリコ】 作家・漫画家。’77年生まれ。短大卒業後、エロ漫画雑誌の編集に携わるも自殺未遂し退職。壮絶な半生を綴った『この地獄を生きるのだ』が話題に。現在は通院を続けながら、NPO法人で事務員として働く。ツイッター@sbsnbun 【中村淳彦】 ノンフィクションライター。’72年生まれ。大学卒業後、出版社勤務を経てフリーライターに。AV女優へのインタビュー集『名前のない女たち』シリーズが話題に、映画化もされる。最新刊『ハタチになったら死のうと思ってた』(ミリオン出版) ― [オンナの貧困]最前線
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