夏の食中毒で恋が実ることも…「吐きそうな彼に惚れまして」
海なし県に住む人々にとって、海水浴は一大イベント。青い海、白い砂浜に憧れ、早い時期から念入りに準備を進める若者も多いようです。
群馬出身の小柴絵麻さん(仮名、35歳)にとっても海は特別な場所。その夏、中学時代からの仲良しグループと行く旅行の約束を特別に楽しみにしていました。

「15~16人の大所帯で茨城の大洗海岸まで行ったのですが、その中には昔から気になっていたT君も混じっていました。
彼は留学先のアメリカから一時帰国中で、この機会を逃す手はないと思ってピッタリ彼をマークしていたんです。ビーチでもホテルでも終始行動を共にするようにしていました」
楽しい時間は瞬く間に過ぎていき、1日目は終了。翌日は帰るだけとなり、絵麻さんたちは朝食を取ると数台の車に分かれて帰路につきました。するとその道中で、意中の彼に思わぬ災難が降りかかったそう。
「帰りの車でもT君の横にちゃっかり座ったのですが、だんだん彼が無口になってきて、顔色も悪くなってきたんです。おかしいなと思っていると、突然、彼が『やばいかも!』と悲痛な声をあげました。どうやら前夜に食べた貝で、食中毒を起こしていたようなんです」
実は前日のビーチの帰り、道端にビーチパラソルを広げて余った食材を売っている地元のおばちゃんたちから、正体不明の貝を購入していたというT君。親友と2人、夜中に夜食として食べていたとか。
「夜に男子グループの部屋へ押しかけたときに、私は彼らがその貝を食べていたのを目撃していました。その時もうっすら『炎天下で売られていたものなんて大丈夫なの?』と不安を感じていたはずなのですが……。
恋の力ってすごいですよね、『無邪気でかわいいな』というポジティブな気持ちの方が勝ってしまって、特に何も言わずに見過ごしてしまったんです」
案の定、怪しげな貝にバッチリあたってしまったT君は、強烈な腹痛と吐き気をもよおし車内で七転八倒。
ちょうどお盆休みの時期と重なっていたため、行楽地から帰宅する車で帰り道は大渋滞。トイレに行かせてあげたくても、トイレのある場所にたどり着けない状況が延々と続いたそう。
「やっとコンビニを見つけても、当時、観光地付近にあるコンビニはトイレを貸してくれないところばかりでした。彼はコンビニに駆け込んでは断られ、隣の喫茶店に頼み込んでトイレを貸してもらうみたいなことを繰り返していました。顔面蒼白で脂汗をかく彼を前に、私は何もできなくて、ふがいなかったです」
それでも後部座席に横になり、必死に辛抱し続ける彼の姿に惚れ直したという絵麻さん。
「田舎は車社会ですから、車を大事にしている男の子がすごく多いんです。今はあまりいませんが、その頃は車内を土足禁止にしている子なんかもいました。だから彼も『友だちの車は何があっても汚しちゃいけない』と思ったんでしょうね。その友情というか、男の意地みたいなものにすごいなって感動しました」
では逆に「T君が車中で嘔吐をしてしまっていたらどう思ったか?」と、ちょっと意地悪な質問を投げかけると、こんな答えが返ってきました。
「うーん、生理的な現象はコントロールできることじゃないですからね。もしそうなっていたとしても、『恥ずかしかっただろうな』『かわいそうだな』と同情して、違う意味で愛情が湧いていたように思います。そんなことで恋心が覚めるなんて私には考えられません」

写真はイメージです(以下同じ)
道端で売られていた貝で食中毒?

6時間も悶絶する彼を見て惚れ直した?

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