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渡辺直美主演ミュージカル『ヘアスプレー』が“黒塗りメイク”無しを決定。東宝に経緯と今後を聞いてみた

ミュージカルの人種問題これからどうなる?東宝に聞いてみた

1900年、ミンストレル・ショーのポスター。白人から黒人への変身を売り物にしていた。ストロブリッジ・リトグラフ社の出版(画像:Wikipediaより)

1900年、ミンストレル・ショーのポスター。白人から黒人への変身を売り物にしていた。ストロブリッジ・リトグラフ社の出版(画像:Wikipediaより)

 ブラックフェイスの起源は、19世紀の米国で白人芸人が顔を黒く塗りつぶしてステレオタイプの黒人を演じた「ミンストレル・ショー」です。  今では、これと同じような、明らかに黒人をバカにした表現は言わずもがな、いかなる理由であっても、舞台上や映画・TVでの黒塗りメイクは差別的な表現としてご法度と考えるべきという考えが世界の主流と言えるでしょう。 「リスペクトを込めたブラックフェイスなら問題ない」と製作者が主張しても、受け取る側にはそうは映らないのが現実なのですから。  ましてや『ヘアスプレー』のように、体型や肌の色など見た目で人を判断するのは「時代遅れだ」というメッセージを持つ作品でそれをやるのは本末転倒。 「Authors’ Letter」の後半には、主人公の母エドナ役を代々男性が演じてきたことに触れ(日本版演:山口祐一郎)、こんなことも書かれています。
<出演者の人種的な背景(あるいはジェンダー)を見るのではなくストーリーを味わっていただきたいと考えています。  そもそもこのミュージカルのテーマは、物事を外見では判断しないことなのですから! 演出やキャストが優れていれば(そうであることを期待しています!)、そういったメッセージは明確に伝わるでしょう>(ミュージカル『ヘアスプレー』公式サイト「Author’s Letter」より)  中には「黒人役をそのまま日本人が演じて、白人役とどうやって見分けるの?」という声もあるようですが、『ヘアスプレー』では当時の白人と黒人のダンススタイルやファッションの違いも見どころの一つであるため、外見ではなくカルチャーで見分けることも可能。心配することはありません。
 とはいえ、『ミス・サイゴン』や『ウエスト・サイド・ストーリー』のようにミュージカルには国籍や人種間の問題を取り扱った海外作品が多く、これからも日本では演出上どのように人種の違いを表現していくのかは課題になりそう。  そこで東宝演劇部に、今回の決定に至る経緯と今後の製作方針について質問。こんな答えが返ってきました。  <当社といたしましても、ブラックフェイスについてさまざまな議論があることは承知いたしておりますが、本作品の演出方法については、原作サイドからの要望を理解して決定し、お客様に演出の意図をご理解いただくことを目的に『Author’s Letter』を掲出したものです。 (今後の作品製作については)作品ごとにクリエイター・演出家の表現や世界観を尊重しつつ、その作品に相応しい演出方法を検討しております。演出方法の決定にあたっては、差別を助長するような表現にならないよう努めております>  日本でも「ブラックフェイス」がどうしてタブーなのか、その知識が広がりつつある昨今。メイクに頼らなくても、演出や役者の演技力、舞台美術、衣装などそのほかの要素をかけ合わせれば十分に舞台は成立するし、鑑賞して楽しめるはず。そんな意識が、作る側にも観る側にもどんどん広がっているようです。 <文/橘エコ> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
橘エコ
アメリカ在住のアラフォー。 出版社勤務を経て、2004年に渡米。ゴシップ情報やアメリカ現地の様子を定点観測してはその実情を発信中。
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