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渡辺直美主演ミュージカル『ヘアスプレー』が“黒塗りメイク”無しを決定。東宝に経緯と今後を聞いてみた

 来年6月から公演予定の渡辺直美主演ミュージカル『ヘアスプレー』がブラックフェイス(黒塗りメイク)をしないと表明し、その英断がネット上で称賛されています。
ミュージカル「ヘアスプレー」

ミュージカル「ヘアスプレー」

人種の違いを表現するためにメイクに頼る必要はない!

 ジョン・ウォーターズ監督の同名映画(1988年公開)を原作として2002年にブロードウェイでミュージカル化された『ヘアスプレー』は、トニー賞でミュージカル作品賞を含む8部門を受賞した話題作。  2007年にはミュージカル版が映画化され、ジョン・トラボルタやクィーン・ラティファ、ザック・エフロンといった豪華キャストが出演したことで世界的なヒットを記録しました。
映画版『ヘアスプレー』(2007年)

映画版『ヘアスプレー』(2007年)

 初の日本版となる今回の公演では、主人公のトレイシー役を渡辺直美が演じる他、Crystal Kayや三浦宏規、平間壮一、山口祐一郎が脇を固めるなど、こちらも豪華な顔ぶれ。「今から楽しみ」「絶対観に行きます」と期待の声が寄せられています。  そんな中、公式サイトが原作クリエイターのマーク・シェイマン、スコット・ウィットマン、ジョン・ウォーターズら連名の「Authors’ Letter(著作者からの手紙)」を発表。 『ヘアスプレー』はダンスに夢中なビッグサイズの女の子が奮闘する青春コメディであると同時に、人種差別に対する抗議が各地で起こっていた、60年代アメリカの混沌とした空気を取り込んだメッセージ性の強い作品。  主人公トレイシー(日本版演:渡辺直美)が、アフリカ系アメリカ人の“モーターマウス”メイベル(同:Crystal Kay)&シーウィード(同:平間壮一)親子たちと一緒に差別問題に明るく立ち向かっていく姿がドラマの肝となってくるのですが、著作者が人種の違いを表現するために「メイクに頼る必要はまったくない」とブラックフェイスに反対の立場を取る声明を出したことが、SNS上で「素晴らしい」「こうあるべき」とポジティブに受け入れられているのです。

悪意がなくとも「結局のところブラックフェイスの一種」

 ブラックフェイスと言えば思い出すのは、以前のバラエティ番組でタレントが黒塗りメイクをした際の論争。  海外メディアから批判が噴出しましたが、日本国内で多く聞かれたのは「人種差別的な意図はないのだからいいのでは?」「海外の基準に合わせる必要はない」という意見でした。  この意見に真っ向から反対しているのが、『ヘアスプレー』の著作者が出した声明文。ブラックフェイスの歴史を考えれば、「悪意がなければやっても大丈夫」という考えなどありえないということをキッパリと伝えています。 <世界中のすべてのコミュニティが『ヘアスプレー』の脚本通りにキャスティングができるような、見事にバランスのとれた民族構成(メイクアップ)にはなっていない(駄洒落で失礼します)ことは理解していますが、当然ながら出演者の顔に色を塗ることなど(たとえそれが敬意をもって、控えめに行われるものだとしても)許可できませんでした。  というのも、やはりそれは結局のところブラックフェイス(黒塗りメイク)の一種であり、いうまでもなく本作品が反対の立場を取っている、アメリカの人種にまつわる歴史の一ページだからです>(ミュージカル『ヘアスプレー』公式サイト「Author’s Letter」より)
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