夫婦喧嘩で「死ねばいいのに」はDV? 夫が“脅迫された”と言い出して…
【私の国際離婚日記 vol.4】
単身渡米し、アメリカ人の夫と約10年の結婚生活ののち、昨年離婚した左近サクラさんの体験談です。(以下、左近さんの寄稿)
昔から日本映画でもハリウッド映画でも、夫婦の喧嘩シーンが大好きでした。物を投げたりグラスを割ったり、大声で鳴いたり、際どい言葉を放ったり。
でもそれは、まさか自分がその渦中の人になろうとは思っていなかったからかもしれません。
一度は愛し合った仲なのに、気持が離れてしまうと人はなぜ罵詈雑言を言い合うのでしょうか? 特にいざ離婚となったときのアメリカ人は容赦がない! 自分の財産を守るためには手段を選ばないのです。
悲しいかな私たち夫婦も、最後の2年間ほどはお互い冷たい言葉を浴びせかけたり、どなり合ったりという状態が続きました。
口論の中で一番解せなかったのは、もう何年も前、まだ二人の仲が悪化していなかった頃に酔っ払った勢いで私が放った「死ねば?」という発言に対する元夫の言動。
もちろん褒められた発言でないのは重々承知していますが、4~5年経ってもネチネチと同じことを持ち出す元夫に「なんとジメジメした男かしら!」と思わずにはいられませんでした。しかも私の発言は「脅迫罪にあたる」と主張するのですからたまりません。
元夫いわく、「死ねばいいのに」はたとえどんな状況で放った言葉であってもDVの一種なのだそうです。 夫婦仲が悪くなって以降、私を攻撃する手段として何度もこのエピソードをほじくり返して来ました。
包丁など凶器を持っての発言ならいざしらず、酔った勢いの「アホ」や「ボケ」代わりに使った「死ね」発言をいつまでも責められるのは腑に落ちなかったのですが、知人のアメリカ人男性(既婚・38歳)に相談してみると、「その発言はちょっとヤバいかもね」とのこと。
「何年も前の話だし、証拠があるわけでもないから、もし裁判になったとしてもそこまで気にする問題ではないと思う。でも、アメリカで『死ね』という言葉はすごくシリアスに受け止められるんだ。今後は慎重になって、そういう言葉は冗談でも使わないことだね」
と、クギを刺されてしまいました。
後日見つけた元夫が弁護士に渡したであろうメモには、私への不満(離婚理由)の一つとして「脅迫された」と書かれていました。
飲んでも飲まれるなは鉄則。以来、私のお酒の量は減り、外ではほとんど酔えなくなりました。
またあるときは、私が割ったグラスの破片で足の甲に擦り傷を作った元夫が、その様子をスマホで撮影していたこともありました。
その日は、元日。年末年始に大型連休を取る文化のないアメリカでも、大晦日に年越しパーティーで大騒ぎした人たちをねぎらう理由からなのか、1月1日だけはお休みになります。
当時すでに元夫の浮気に感づいていたのですが、問い詰めても本人はトボけるだけだったので、大晦日の会社の帰り道に「不倫相手の女と出かけたのではないか?」という疑惑は、私の心の中だけに留めておこうと誓っていたのです。
ところが、なにかの拍子で喧嘩になり、怒りのスイッチが入ってしまった私は、洗っている最中のワイングラスをキッチンシンクにぶつけて割ってしまったのです。
すると、背後で朝からビールを飲んでいた元夫が不可思議な行動に。何をしているのかと聞けば、「お前が割ったグラスの破片が飛んできて俺の足に傷がついた。DVの証拠だから写真撮っとく」とニヤリ。
言われた途端にゾッとしました。「そんなことまでするのか!?」と。ゲス不倫中の夫に呆れた妻が、意図してではないにせよグラスに怒りをぶつけた格好になり、それでもどうにかその場をやり過ごそうとしているのに「なんて気持ち悪い男なのか!」とね。

写真はイメージです(以下同じ)
どんな状況でも「死ね」はご法度

割れた傷ついた足をスマホで撮影。証拠はバッチリ?

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