東出昌大が杏との“朝ドラ婚”（朝ドラで夫婦役をやったことがきっかけで結婚）という、この上ない好感度を手放すことになった不倫相手・唐田えりかは、映画の共演者であった。そのため、東出には、清潔感あふれる知性派というイメージから、共演者を好きになってしまう人という新たなイメージがついた。 　一般人の我々だって職場恋愛やリゾラバ（古い）のように、特定の環境下でついついその気になってしまうことはある。俳優が演じる役にのめり込むあまり、相手役を本気で好きになってしまう現象もあると聞く。ただし共演が終わった途端、あっさり冷めるということもあるとも。 　東出の不倫を報じた1月22日の文春砲から2ヶ月強。主演ドラマ『ケイジとケンジ　所轄と地検の24時』（テレビ朝日）が3月17日に最終回を迎えると、東出はようやく不倫問題について語る囲み取材を行った。 　映画『三島由紀夫 vs 東大全共闘 50年目の真実』の公開直前の宣伝も兼ねているところがちゃっかりしているうえ（映画には罪はないです）、「杏さんと唐田さんどちらが好きですか」という記者のド直球の質問に「お相手のこともあるので。私の心の内を今ここでしゃべることは妻を傷つけることになると思いますので、申し訳ありません」と回答。それがまた幾多の民衆の反感を買ってしまい、ネットニュースは再び盛り上がった。 　1月末と3月半ば、2度もこんなに燃えるなんて東出昌大、すごいと思う。妻が好きですと言わないことについてはもうたくさんの記事が出ているので短く書くに留めるが、「お相手があることですからお答えできない」というのはある種の常套句である。ほかに「墓場までもっていきます」がある。 　東出は正直にそれを言ってしまったところが、真面目というか不器用なんだなあと私は思った。「ご想像にお任せします」と言わなかっただけマシだと思う。 　囲み取材での四角四面な受け答えは、夢の朝ドラ婚につながった「ごちそうさん」（2013年）で東出が演じた西門悠太郎を思い出した。彼は勉強一筋の堅物で食えない人間だが、そこが良くて愛された。 　そういえば、「ごちそうさん」でも、妻・め以子（杏）が夫の浮気を疑うエピソードがあったっけ。そのときは、悠太郎がふらりとなるものの、お相手が踏みとどまった。 　浮気から戦争まで様々な障害を乗り越え、悠太郎とめ以子は仲睦まじく暮らしていくのである。そのドラマのイメージが東出と杏にどれだけ良いイメージをもたらしたことであろうか。 　俳優は出会った役のイメージによって運命が左右される。それを逆手にとろうとしたと感じたのは、東出の主演ドラマ「ケイジとケンジ」である。 　報道前の1月16日に放送された「ケイジとケンジ」第1話は視聴率12％で好発進だったが、報道翌日の23日放送の2話は9.7％に。3話で少し戻したけどあとは、一桁台のままで、9話で終了した（話数は予定どおりかもしれない）。 　ドラマは放送日の直前まで撮影していることが多く、「ケイジとケンジ」は報道後から、東出演じる検事の役の語るセリフにどことなく現実の不倫問題を思い出させるようなものが増え、それがまたネットで話題になった。 　私が面白く見たのは2月6日放送の第4話。ドラマがはじまって40分後くらいに、東出演じる検事が犯人の女性にこう語りかける。 「あなたは自分が犯した罪をこころから反省し二度と同じ罪をくりかえしてはならない。 　たとえば、心から打ち解け本音を語れる同性の友達を作ってみてはどうでしょう。 　デリカシーのない男の悪口をおもいきっり言いあえるような女友達です。『あいつはクズだって』」

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木曜ドラマ『ケイジとケンジ 所轄と地検の24時』公式(@keijitokenji)がシェアした投稿 – 2020年 1月月8日午後11時41分PST

　このときの東出がなぜか妙に涙目で声も震えて聞こえるのである。もともと声は若干震え声だったとはいえ、その前のシーンまでの東出のテンションとなんだか様子が違うのだ。現実の東出の件によってバイアスがかかっているとはいえ、なんだか演技過多な気が……。 　制作側としては何もしないでドラマにそっぽを向かれるよりは、ドラマと現実をリンクさせるエンターテインメントとして攻めたように見える。 　こういう状況を見ていて、私は、以前、東出昌大の取材をしたときのことを思い出した。