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レスラーのヌード写真集を出したDDTのブランド戦略とは?【プロレス女子の手記5】

 3月3日、ひな祭り。新宿FACEで行われた女性限定イベント「BOYZ」。イケメンレスラーたちの“裸にエプロン”姿に、女性たちが熱狂した。ショーが終わると、エプロンを脱いだレスラーたちは激闘を繰り広げる。黄色い悲鳴と熱い歓声が入り混じる。この異様な光景を仕掛けたのは、DDTプロレスリング社長・高木三四郎氏だ。 ⇒【写真】はコチラ http://joshi-spa.jp/?attachment_id=221953  2013年8月、DDTは「両国国技館大会2days」を開催した。2日間、インディ団体が両国国技館を埋めるというのは至難の業。そこで高木社長は何をしたかというと、なんとレスラーのヌード写真集を出版したのだ。
レスリーキー撮影のヌード・ポスター

レスリーキー撮影のヌード・ポスター

「崖っぷちの芸能人が話題を集めるために脱ぐじゃないですか。だから脱いだほうが面白いなと思ったんです」と、高木社長は当時を振り返る。“レスラーのヌード”というセンセーショナルな写真集は大きな話題となり、興行は大盛況のうちに幕を閉じた。常に一歩先行く発想で、プロレス界に一石を投じてきた高木社長に話を聞いた。

プロレス女子急増の背景

 プロレス会場に女性客が増え始めたのは、2012年の後半。2013年5月、有吉弘行・櫻井翔『今、この顔がスゴい!』(TBS)でDDTの女性ファン増加が取り上げられてから、一気に“プロレス女子”が急増したという。それ以前からレディースデーやレディースシートを設けるなど、女性向けの試みをしてきたDDT。 「元々、ジャニーズや宝塚を意識していたんです。どちらも女性のお客さんを対象にしたコンテンツですよね。宝塚は親子三代で観に行けるジャンルですし。そういった中で、プロレスも女性ファンを取り込んでいこうと思いました。女性は冷めるのも早いですが、がっつりハマると長く見続けてくれるので」
DDT高木三四郎社長

DDT高木三四郎社長

 女性客限定の興行を始めたきっかけは、ももいろクローバーZの女性限定ライブ『女祭り』だったという。「アイドルのライブって、男性しか行かないじゃないですか。女性だけで日本武道館が埋まる、という現象がカルチャーショックでした。プロレスは男性客が多いわけなんですが、この現象はプロレスにも当てはめることが出来るんじゃないかなと思ったんです」と高木社長は話す。  ももクロ人気の原動力の一つが、“女性限定ライブ”だと高木社長は踏んでいる。「ももクロは、『女性ファンが多い』というイメージ戦略に成功したんだと思います。女性がライブに行きやすい環境ができたことが、躍進に繋がったんじゃないかなと。プロレスも、『女性が試合に足を運びやすい』というのは団体の戦略として打ち出したほうがいいと思うんですよ」。女性は口コミの発信力がすごい。流行の発信源も女性であることが多い。劇場やライブへ行くフットワークの軽さも女性ならではだ。そういった女性のパワーを取り込んで、DDTは確実に規模を拡大した。

“会いに行ける”プロレスラー

 女性限定興行や、『DDTドラマチック総選挙』(勝敗や技術ではなく、レスラーを“人気”で決める画期的なイベント)以外にも、DDTには女性ファンの心を掴んで離さない要素がたくさんある。その一つが、DDT運営の居酒屋「エビスコ酒場」、スポーツバー「ドロップキック」。現役レスラーたちが従業員として働いているのだ。  この日の取材場所は、エビスコ酒場。取材後、カウンターでビールを片手に、副店長に話を聞いた。シフトに入っていたのは、DDTの若手ブランド・DNA所属の梅田選手と岩崎選手。調理場に立ちながら常連の女性ファンと和気あいあいとしている。普段の“血気盛んな若手レスラー”姿とは、まったく別の無邪気さ。ファンにとっては堪らないだろう。
岩崎孝樹選手、梅田公太選手

岩崎孝樹選手(左)、梅田公太選手

 副店長曰く、この店は「地方から出てきた若手選手が、プロレス以外でお金を稼げる場所」とのこと。また、ケガをして休養を余儀なくされた選手の収入源でもあるそうだ。高木社長は、飲食ビジネスに着手したのは「レスラーが食べていける環境を作るため」だと話している。

選手のバースデーイベントで大盛り上がり!

 同じビル8階の「ドロップキック」で、ヤス・ウラノ選手のバースデーイベントが開催されていると聞いて覗きに行った。扉を開けると、あまりの熱気に唖然とした。店内は女性客で埋め尽くされ、ヤス・ウラノ選手や他の選手たちがフレンドリーにお客さんと談笑している。最近、「レスラーのサイン会や撮影会が女性に人気」と話題になっているが、この店ではレスラーと酒が呑める。まさに“会いにいけるプロレスラー”最前線だ。
ヤス・ウラノ選手と、ファンの女性たち

ヤス・ウラノ選手と、ファンの女性たち

 メニューには、選手の名前がついたオリジナルカクテルが用意されている。ヤス・ウラノ、MIKAMI、飯伏幸太……。同じテーブルのお客さんがたまたま全員“飯伏カクテル”だったので、「飯伏選手が好きなんですか?」と話し掛けると、「いまはアントーニオ本多選手」「HARASHIMAさんもいい」「今度の後楽園ホール行きますか?」と、プロレス談義が始まった。店内の大画面スクリーンには、新日本プロレスの中継が映っている。DDT運営のスポーツバーで、新日本プロレスの試合を観ながら手に汗握るという、不思議に居心地よい空間。プロレスにはこういう楽しみ方があるんだとワクワクした。  DDTのブランド戦略は、プロレスファンに贅沢なワクワク感を提供してくれる。次はどんなことを仕掛けてくるんだろう?というワクワク感。「プロレスは非日常」という言葉の意味が、最近少し分かってきた。マッチョなレスラーが飛んだり跳ねたりする試合風景も非日常。プロレスを観ているとき、プロレスについて仲間と語り合っているとき、“日常を忘れられる”感覚もまた飛び切りの非日常だ。 <取材・文・撮影/尾崎ムギ子> ■炭火焼居酒屋 エビスコ酒場 東京都新宿区歌舞伎町1-14-6 第21東京ビルB1 TEL:03-5155-0821 http://tabelog.com/tokyo/A1304/A130401/13102128/ ■プロレス&スポーツBar ドロップキック 東京都新宿区歌舞伎町1-14-6 第21東京ビル8F TEL:03-6278-9230  http://r.gnavi.co.jp/e316600/
尾崎ムギ子
1982年4月11日、東京都生まれ。上智大学外国語学部英語学科卒業後、リクルートメディアコミュニケーションズに入社。求人広告制作に携わり、2008年にフリーライターとなる。「web Sportiva」などでプロレスの記事を中心に執筆。著書に『最強レスラー数珠つなぎ』『女の答えはリングにある』。Twitter:@ozaki_mugiko
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