ママの愛が足りない? 「根拠ナシ育児論で自分を責めないで」と小児科医
「育児は母親がするもの」といった論調が当たり前とされていたころから、いくらか世の中が変化し、男性が積極的に育児に参加することも増えました。
一方で、3歳児神話(子どもが3歳になるまで母親は育児に専念すべしといった考え)をはじめ、母親だけを神聖化して子育ての責任や義務を課すような論調が、依然としてネット上を中心に見られます。ときには多くのフォロワーを持つ“有名人”が、SNSを通じてそういった情報を発信していることも。
そういった問題について「母親が信じてしまい、不安に思ってしまう下地がある」と、『小児科医ママが今伝えたいこと! 子育てはだいたいで大丈夫』の著者であり、小児科医の森戸やすみ先生は指摘します。
今回は母親の存在を神聖化するような論調の問題や、惑わされないための心構えについて聞いていきます。
――「“母親が”愛情を注がないと人格形成に問題がおきる」「子どもは母親といつも一緒に」といった論調をネット上で見ることがあります。どういったところが問題だと考えますか?
森戸やすみ先生(以下、森戸):お母さんに面倒なことを全部押し付ける言い訳になっていると感じています。こういった話の多くはまったく根拠のないものです。ですが、真面目なお母さんの中には、迷ったり信じてしまったりして罪悪感を持つ方がいます。
――どういう要因があるのでしょう。
森戸:例えば3歳児神話は、厚労省が否定しています。子どもが育つ過程でいろいろな大人とかかわったほうが、子どもにとっても、家族にとってもいい、という研究結果も出ています。
ですが、そういったことを知らない方がほとんどです。子どもを保育園に預けるとき、漠然とした罪悪感を持っている方が多いです。「私が育てるべきなのにごめんなさい」と思ってしまう。お母さんは育児の大変さや忙しさで心や体が弱っていて判断能力が鈍っている場合もあります。もともと真面目で罪悪感を持ちやすいお母さんが、何とかしなければと思い悩んでしまう下地があります。
そして「あなたがちゃんとしていないから、子どもが風邪をひく」「内気な子になったのはあなたが外遊びをさせないから」などと言われてしまうと「本当かもしれない」と思ってしまうんです。
――そういう論調に惑わされないために必要な心構えはなんでしょうか。
森戸:家族として一緒に考えて一緒に対処する。そういう心構えをお父さんにもお母さんにも持っていてほしいです。お母さんが「母親だから」と全部把握しようとするのは頑張り過ぎです。お父さんが「外で稼ぐのが仕事だから」、子育てには関与しない。これも問題です。
――知識の面で必要なことは?
森戸:読みにくいことと忙しさから皆さんあまり読まないのですが、ネットを頼ったりする前に、母子手帳をまず読んでもらいたいです。母子手帳は健診と予防接種のスタンプカード的な側面もありますが、知ってほしいことも載っています。離乳食としてどのようなものをあげたらいいかとか、誤嚥したときのお腹の圧迫のしかたなど、かなり具体的なことが書いてあります。
真面目なお母さんの中には信じてしまう人も
ネットの前に「母子手帳」を見て
