「その話題がタブーになって、そこから双方がどんどん引け目を感じていくことでしょうね」
自身もセックスレスの経験があるチホさん(39歳)はそう言う。結婚して10年たった今年の春に離婚したばかり。

「
うちは“出来ちゃった婚”だったんですが、それっきりレスでした。だから結婚してから一度もしていないんです。
私から何度も誘ったけど、夫は『疲れているから』の一言だけ。子どものことはかわいがっていたけど、ふたりの会話はどんどん減っていった。そのうち『
子どもがいるんだから、今さらする必要もないだろ』と言ったんです。セックスって必要だからするものなの? 私はあなたに触れたいし、愛されていると感じたいと言ったけど、夫は『
オレはもういい、ごめん』と」
みじめだったとチホさんは言う。女として見られていないことが、そしてひとりの人間として敬意をもってもらっていないことが。
「
そうなるともう、私からセックスの話題は出せない。夫もその話はしない。日々の会話は子どものことばかり。次第に子どもを通してでなければ会話ができなくなっていきました。寂しかったし、自分の中で夫への愛情が薄れていくのも感じていた」
子どもが8歳のとき、チホさんは学生時代の同期に再会、一度だけ関係をもってしまう。まだ自分は女として見てもらえることがわかり、うれしかった。一方で、「結婚しているからといって、女として扱ってくれない夫と一緒にいなければいけないのだろうか」と考え始めた。もちろん収入的にはふたりで仕事をしたほうが余裕がある。だが、
このまま一生、夫とセックスしないで過ごすのか、自分の性欲を封じ込めたまま暮らすのかと考えるとめまいがしたという。

「性欲を外で満たして、家庭は維持する方法もありましたが、正直言って、私はもう夫を愛せないとわかってしまった。だから
離婚を切り出しました」
最初は絶対に離婚はしないと言っていた夫だが、チホさんは「だったら愛情を行動で示してよ」と詰め寄った。「
愛情は給与で示している」と言い放った夫に「価値観が違う」と吹っ切れたそうだ。
「夫婦ふたりともセックスしなくていいよねとコンセンサス(合意)がとれていれば問題はないと思うんです。でも一方がしたくて、一方がしないのなら、
きちんと話し合わないと生活にひずみがきます。レスになりかけたとき、私もやはりオープンには働きかけができなかった」