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『エルピス』はテレビ局の“恥部”をなぜここまで描けたのか、佐野プロデューサーに聞く

テレビ局の恥部を描く『エルピス』は、なぜ通ったのか

――その一方で、この作品を観ていると、怒りや違和感を言葉にすること、すぐに諦めない、忘れないことも大事だなと感じます。 佐野:私は怒りが原動力になっている部分があって。ただ、過去はともかく、今は特定の個人に対しての怒りより、社会の不平等や無能な政治家とかに対する怒りのほうが大きいですね。毎日ニュースを見て「本当にこの法案このまま通っちゃうの!?」と思ったり。 今は個人に対してではなく、社会に気持ちを向けていられることが、ありがたい状態だと思うんですよ。だからこそ、そうした社会を少しでも改善できるようなドラマを作りたいと思います。
エルピス 恵那 岸本

序盤の恵那と岸本(C)カンテレ

――それにしても、この企画、よく通りましたね。例えば、報道番組が「スクープはリスキーだからやれない。後追いならやる」とか言って、週刊誌にネタをあげちゃうとか、テレビ局の裏側を明かしまくりで。 佐野:脚本を先に作っていたことが大きかったと思うんですよね。なんでこの企画が通ったのか、実は私もよくわかってないです(笑)。会社も、あまり深く考えずにうっかり通しちゃってから「こんな話だったのか」と思っている人もいるかもしれない(笑)。 ――「長澤まさみOKしてるの? いいじゃん! やろうよ!」みたいな?(笑)。

カンテレは最後のユートピア?

佐野:(笑)カンテレの制作現場はいい意味でユルさがあるというか、現場の自由にさせてくれる最後のユートピアだと思います。 ――恵那が、賛否のあった東京オリンピックについて「安倍首相は『福島について状況はコントロールされている』と述べました」「開催が決まって被災地の人たちも喜んでいます!」と盛り上げていた過去の自分を、自己嫌悪とともに思い出す場面。ヒリヒリしましたし、放送後は大きな反響がありましたよね。あそこもお咎(とが)めはナシで? 佐野:そうなんですよ。もしかしたら、私のところまで止める声が届くことはなくても、上の部長とかが守ってくれている可能性はありますが。
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「みんな等しく、作品の奴隷なんだ」
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