佐野:それに、私は日頃からなるべく話しかけにくいキャラを作っているんですよ。できるだけ、自分が面白いと思った脚本をそのままの形で出せるようにという思いがあります。

ホモソーシャルの頂点にいるような斎藤(鈴木亮平)に、恵那は惹かれてしまう(C)カンテレ
――周りに、嫌なおじさんとかホモソーシャル(男社会)な人がいると、今の佐野さんはどんな態度をとりますか。
佐野:もう、ホモソの人は、私みたいな人には近づいてこないですね。
でも、もっと年上の人からはマンスプレイニング(男性が、女性や子供を見下した自信過剰な態度で物事について説明すること)みたいなことはあります。そういうとき、私にはピエロスイッチがあるので、バチンとスイッチを入れて「へぇすごいですね」とキラキラした目で見る、という振る舞いをついしてしまいます。
その振る舞いが彼をさらにつけ上がらせているなと思うんですけど、いつかしっぺ返しを喰らうだろうから、今私がそれをする必要はないなと。人生の時間とか自分の使える力は限られているので、特にドラマ中はできるだけ余計なことはしないようにしています。
佐野:私は自分のためには戦えないんですよ。作品のためには戦えるんですけど。だからマンスプレイニングのおっさんが私に近づいてきたとしても、それが仮にドラマを守ることになるならいくらでもホステス的な振る舞いをするし、ドラマを守るためなら、本当は悪いと思ってなくても謝ることもできるし。
周りから見たら矛盾した行動を取っていることもあると思うけど、私にとって大事なのはドラマを一番良い形で出すことなので、自分個人の尊厳はどうでもいいと思ってしまうときもあるんです。
――そう思えるようになったのは、いつからですか。
佐野:やっぱり坂元裕二さん・渡辺あやさんと会ったことと、休みを取ったことが重なる2016~19年の3年間くらいがきっかけですね。
あやさんに、「佐野さんは、作家や監督のずっと下にプロデューサーがいると思っているようだけど、そうではない。どのポジションも、みんな等しく作品の奴隷なんだ」と言われたんですね。それを肝に銘じて、迷ったらこの言葉を思い出すようにしています。