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ザコシショウの審査コメントが影響か?R-1決勝に“ギャグの羅列ゼロ”の事情とは

3月4日にフジテレビ系で生放送されたピン芸人日本一決定戦「R―1グランプリ2023」は、初出場の田津原理音の優勝となりました。
(画像:R1グランプリ公式サイトより)

(画像:R1グランプリ公式サイトより)

今年は大喜利を並べる系のネタが多く、広い意味では優勝した田津原のフリップの変形ネタも含め、大勢になったのに比べて、ギャグの羅列はゼロ、一人コント系のネタも準優勝のコットンきょんだけの披露となりました。 かつてピン芸人「大輪教授」として活動し2007年R-1ファイナリストに選出され、現在はお笑い事務所の若手芸人のネタ見せもつとめる構成作家の大輪貴史さんに、大喜利系のネタの難しさや、ギャグ系、一人コントなど今年のR-1でのピンネタについて解説してもらいました。 【関連記事】⇒「R-1に夢あります!」元ファイナリストが語る、優勝ネタの衝撃的“フリップの弱点”克服方法とは

陣内&バカリズム/小籔で審査が分かれた大喜利の羅列ネタ

――今年はカベポスター永見、こたけ正義感、寺田寛明など、大喜利を並べるネタが多く、その難しさに注目が集まったように思いますが…。 <大喜利系の難しさについてですが、カベポスター永見さんの評価は審査員の中でも分かれました。 高得点を付けた小籔千豊さんは、審査コメントで「言われたあとにワッて勝手に自分で画(え)、浮かんでもうて、スピードガン言うてるヤツ、多分球団のアホの社長の娘なんやろな、とか…」と、おっしゃっていました。 この言葉が大喜利系の難しさを象徴しているのではないでしょうか。>(大輪貴史さん 以下、山カッコ内同じ) ――「へえ~わたしよりもスピードガンを信じるんだ」というくだりですね。(※スピードガンとは野球などのスポーツで使われるスピード測定器のこと) <つまり、「想像をふくらませることができる面白さ」に高得点を付けたのだと思われます。しかし、バカリズムさんと陣内智則さんの得点は低いものになってしまいました。「観客に想像させなくてはいけない」ことをネックに考えたのではないでしょうか。 バカリズムさんはコメントのなかで、「フレーズ以外のすべてもう排除しているので、そうなって来るともう、フレーズだけ、というか、フレーズのすべてがもう、破壊力がないといけない」とおっしゃっています。 フレーズ以外のすべてを排除しているということは、演技やシチュエーションなど、状況を説明しているものがありません。つまり、バカリズムさんが言っていることは、すべてのフレーズが「誰もが想像しやすく楽しめるものになっているか」と解釈できます。 スピードガンのフレーズに出てくる女性が、人によっては「球団のアホの社長の娘」にもなるし、「野球に詳しい彼女」にもなるし、「野球を初めて見た彼女」にもなりえます。また、そのセリフを言われた方を「ピッチャー」と思う人もいれば、「一緒に野球観戦している彼氏」と思う人もいれば、「球団スカウト」と思う人もいます。 大喜利系は、「観客によって解釈にブレが出やすい」のが難しいところです>

ザコシの審査コメントが影響?ギャグの羅列ネタはゼロ

――ギャグを並べるネタが今年は無かったですが、去年も審査員をつとめたハリウッドザコシショウの「僕も昔ギャグの羅列(られつ)やった事あるんですけど評価に値しなくて、それを凌駕(りょうが)するような爆発力が欲しかった」というコメントを反映してなのでしょうか…? <ハリウッドザコシショウさんが去年おっしゃった「ギャグの羅列は評価に値しない」というのは、ザコシショウさんがそう考えているというより、過去にご自身がそういう評価を受けたことからおっしゃったのではないかと推測しています。そのあとに「それを凌駕するような爆発力が欲しかった」とも言っているので、「誰もが納得する面白いギャグの羅列の3分間」を期待しているようにも感じます。 個人的には、ギャグの羅列でもなんでも、面白ければそれでいいのでは、とも思っています。 数年前、サツマカワRPGさんと話したときに、「R-1、ショートコントの羅列だと勝てないんですよねえ…」とこぼしていました。その後、2022年、2023年と、3分間一貫性を持たせたものを練り上げ、見事決勝進出を果たしました。 去年、Yes!アキトさんは、予選からギャグの羅列のネタをして、復活ステージから決勝に勝ち上がってきました。これは、予選の審査員に評価されてではなく、視聴者投票によるものです。 サツマカワさんもアキトさんも、R-1グランプリで勝つ戦略のもと、ネタを仕上げてきています。自分が最も得意としているスタイルを変えてきているのです。それでも勝ち上がる彼らの地力には驚かされますが、彼らの本来の魅力は、別の場所ではさらに輝きを増すのではないでしょうか> ――たしかにM-1グランプリからの“競技漫才”という言葉ができるくらいですし、賞レースで強いネタはまた普通の寄席やライブネタとはちがうのですね。
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唯一“正統派1人コント”のコットンきょんは…
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