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「R-1に夢あります!」元ファイナリストが語る、優勝ネタの衝撃的“フリップの弱点”克服方法とは

ひとり芸日本一決定戦「R―1グランプリ2023」(フジテレビ系)が3月4日に行われ、田津原理音(たづはらりおん)が21代目王者に輝きました。
昨年のM―1グランプリで優勝したウエストランドがネタの中で「R-1に無いのは夢!希望!」とブチ上げて笑いをとったことでも注目が集まる中、田津原は過去最多3537人の頂点に立ち、優勝賞金500万円を獲得しました。 かつてピン芸人「大輪教授」として活動し2007年R-1ファイナリストに選出され、現在はお笑い事務所の若手芸人のネタ見せもつとめる構成作家の大輪貴史さんに、優勝者をはじめインパクトを残したネタについて解説してもらいました。

「こんな見せ方があったのか!」カード開封動画ネタに衝撃

――優勝した田津原理音のネタは2本とも、YouTubeにあるようなゲームのカードの開封動画ネタでしたが、いかがでしたでしょうか? <田津原さんのあのネタを初めて見たときは、「こんな見せ方があったのか!」と、衝撃を受けました。 開封動画というテーマも時代を反映していますし、モニターで手元を映し出す技法も現代ならではのやり方です。 舞台上のものを映し出す技術自体は、何年も前からもちろんありましたが、芸人の世界で言うと単独ライブのような状況でしかできませんでした。賞レースの予選や普段のライブでは、セッティングで前後の出演者に迷惑がかかりますし、現場でモニターをお借りするのもひと苦労でした。 個人での配信などが当たり前になってきて、技術が一般化して簡単かつ可能になった状況です。R-1グランプリで言えば、野田クリスタルさんが自作ゲームのネタで優勝したのが大きかったかもしれません>(大輪貴史さん 以下、山カッコ内同じ)

紙のフリップネタの弱点を克服

――ネタ披露前のVTRで「今までフリップ芸をしてきたんですけれども、今回ちょっと一新しまして、良いところを全部詰め込んで違った形での見せ方にこだわったんです」「僕からすると同じフリップ芸なんで」と本人が語り、「フリップの境界線」とキャッチフレーズがつけられていました。 <紙のフリップのネタを使ったネタは、ピン芸人の世界では非常に多いです。しかし、フリップのネタは弱点が2つあります。 1つ目は、あの大きな紙です。あの大きな紙のフリップは、日常生活に存在していません。日常生活にないものを、出演者の都合で持ち出してきているのです。そもそも不自然なんです。「紙芝居」という形で出すのも、令和では苦しくなってきましたし…。 2つ目は、用意されたフリップがどうしても予定調和に見えてしまうことです。ほとんどの漫才やコントには台本があって予定通りに進むものですが、お喋りや演技で予定調和感をなくしています。しかし、あのフリップをめくっていく作業はどうしても、用意された感が出てしまうのです。 ところが、田津原さんの開封動画のカードは、日常生活にある「フリップ」でした。これにはやられました! しかも、「カードがダブる」「レアじゃないカードを雑に見せていく」「キラカードがある」など、開封動画じゃないとできないくだりがふんだんに盛り込まれていました。もし、大きな紙のフリップであのネタを作ったとして、カードがダブったくだりがあっても、あのようにはウケないと思いますし、それこそ出演者の都合に見えてしまいます。 そして、開封するドキドキ感が、予定調和の雰囲気を壊してくれました。観客は田津原さんと一緒に「次なんだろう?」とワクワクしながら見ることができたと思います。(本人はもちろん演技ですが)> ――なるほど!開封動画という設定をうまく活かしていました。
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ファイナルステージが僅差になったワケは?
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