福山雅治の全盲役は、“伝説のオスカー俳優”を彷彿とさせる。話題の新ドラマでみせた実力
福山雅治が、全盲のFBIの捜査官を演じるって?
まさかそんなエキセントリックな役柄を何の違和感もなく演じきってしまうなんて。毎週日曜日よる9時から放送されている『ラストマン-全盲の捜査官-』(TBS系)に出演する福山を見て、どうか驚かないでほしい。
「イケメンと映画」をこよなく愛する筆者・加賀谷健が、「スターに不可能はない!」と感じる福山雅治のワールドクラスな演技に迫る。
いつだったか、音楽番組に出演した福山雅治を初めて見たときのこと。アコースティックギターで弾き語りするシンプルなスタイルを見て、テレビ画面に釘付けになったことがある。ああ、こういう人をスターと呼ぶんだ。そう思った。
稀代のシンガーソングライターである福山が、ギターにかける愛情深さは、よく知られている。クラシックギタリストを演じた主演映画『マチネの終わり』(2019年)では、平野啓一郎による原作のモデルになった世界的ギタリスト・福田進一にギターの手ほどきを受けている。劇中の演奏について、主題歌『幸福の硬貨』以外は福田による吹替だが、福山はクラシックギター初挑戦とはとても思えない堂々たる佇まいでクラシック界のギタリスト像を体現した。
同作は、音楽界と映画界、そのどちらでも福山の圧倒的なスター性が遺憾なく発揮された好例だ。アーティストとしても、俳優としてもこれだけの実力と成功を誇る才能は、世界に目を向けてみても数少ないと思う。
子どもの取り違えをテーマにした主演映画『そして父になる』(2013年)で父親役を演じたとき、福山は当初、次のように懸念していた。
「僕自身が気にしていたのは、とにかく父親に見えないと思うので、大丈夫ですかねということを是枝さんにうかがったんです」(映画.comインタビュー「福山雅治に大きな糧をもたらした運命的な出会いと新たな意欲」より引用)
なるほど、スター福山でも演じる役柄に対するこうした不安を抱くものなのか。「全然大丈夫です」という是枝裕和監督の後押しがあり、仕事人間だった男が息子に向き合い、「そして父になる」過程を繊細な息遣いで表現した。福山のスター性がすごいのは、単に佇まいが華やかだとかいうことではなく、徹底的な役作りの結果、役柄に完璧な説得力を持たせることだ。
スターに不可能はないのか。つい思ってしまうが、今回の日曜劇場『ラストマン』で、盲目のFBI特別捜査官を演じると聞いたときには、現実味がなさすぎる役柄に説得力を持たせるのはさすがに難しいんじゃないかなんて思った。いやぁ、それが取り越し苦労もいいところだった。
アーティストとしても、俳優としても実力と成功を誇る才能
スターに不可能はないのか
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