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福山雅治の全盲役は、“伝説のオスカー俳優”を彷彿とさせる。話題の新ドラマでみせた実力

アカデミー賞俳優の名演にも勝る正確な演技

「ベルガモットの香りがします」  FBIから派遣されてきた特別捜査官・皆実広見(福山雅治)は、アメリカから来日する飛行機内でさっそく、手柄をあげる。ご所望の蕎麦を食べ、残った汁に蕎麦湯を注ぎ入れているところ、店内に入ってきた警視庁の護道心太朗(大泉洋)に向かって言った一言だ。  他にも湿った靴音など、相手の素性を把握するための情報を視覚以外の感覚で瞬時に集め、分析する。すご腕の盲人が、特に香りに敏感な姿を見て思い出すのは、アル・パチーノが全盲の退役軍人を怪演した『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』(1992年)だ。 「わずかなため息も気持ちが伝わります」と言って、相手の真意を読む読心術を駆使する様子も、同作へのオマージュを感じる。頑固なフランク・スレード中佐役がやや過剰な演技の気もするアル・パチーノに対して、福山は割と素直なところが多い皆実役を繊細かつ大胆に演じる。  かたやアカデミー賞主演男優賞に輝いたアル・パチーノ、かたや日本トップの大スター福山雅治。ここは(大胆にも)福山に軍配を上げたい。アカデミー賞俳優の名演にも勝る福山の正確な演技は、非の打ち所がないからだ。

やることなすこと、すべてがワールドクラス

 さすが、FBI捜査官だ。VIP待遇で、ホテルのスイートルームでフレンチトーストに舌鼓をうったり、得意のフィンガースナップで決めポーズを決めたりと、日本人離れした動作で視聴者を魅了してくれる。そんな皆実は、日本の警察にはない規格外の操作方法でさらに驚かせる。  第1話のラスト、連続爆破犯に対峙する皆実の孤高の姿が素晴らしかった。人質をとる交番前で、犯人(宮沢氷魚)が拳銃をつきつける。威嚇射撃にひるむことなく、皆実は、白杖を頼りにずんずん足取りを進める。じりじりとつめられ、手に汗握る距離のアクション。その距離、ゼロ。目の前で銃を向けられる大ピンチかと思いきや、軽やかに身をよじらせて犯人に強烈な顎うちをかます(この必殺技もスレード中佐の得意技に似ている)。現場を無事に制圧し、逮捕。  事件捜査を担当する佐久良円花(吉田羊)が、「あれでほんとうにFBIの特別捜査官なの」と言っていたが、いやはやこんなインパクトのあるアクションを見せつけられては、疑いの気持ちも爽やかに吹っ飛んでしまう。  やることなすこと、すべてがワールドクラスな皆実役に、紛れもない説得力をもたせた犯人逮捕の瞬間だった。やはりスターに不可能はなかった。福山雅治、恐るべし! <文/加賀谷健>
加賀谷健
コラムニスト / アジア映画配給・宣伝プロデューサー / クラシック音楽監修「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu
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