
子どもたちは、一連の動作をパッケージ化する速度が圧倒的に早い。自分の脳に合った運動なら、ひと目見てすぐに真似ができ、1、2回踊っただけで、パーケージ化されるなんてことも。だから、スラスラと振り付けを覚え、自然に踊れるように見えるわけ。でもね、その代わり、当たり前すぎて、飽きるのも早い。醍醐味なんて、味わえない。
というわけで、「オトナの習い事は、新しい技を、自分の脳がじょじょに小脳パッケージ化してゆくのを楽しむ嗜たしなみ」と心得て、子どもたちとは、違う楽しみ方をすればいいと思う。①結果を急がない、②他人と較べない、③パッケージ化のプロセスを共に楽しめる仲間がいる。これがコツである。

さてさて、60代の習い事、実はめちゃくちゃエクセレントなのである。なにせ、気づきの天才だから。
若い人の何倍もの気づきが起こり、本質にたどり着くのがとても速いのだ。「ことばにならない感性情報」の収集力は、20代を圧倒する。考えてみれば、書とか古美術とか能とか茶道とか、ことばになりにくい深淵の芸術は、いつの時代も60 代70代が多く嗜んで、楽しんでいるものね。
私自身は最近、書の面白さがわかってきて、書展も見に行くし、書道を習いたくてしかたない。学生時代は苦痛でしかなかったお習字だが、今や、文字と筆の流れに込められたあまたの情報が、私の脳に流れ込んできて、キラキラして見える。人生、これだから、面白い。
地球の裏側の、初めての街に降り立っても、その町の感性情報をあまた手にして楽しむことができるのである。60代、旅もしよう。
<文/黒川伊保子 構成/女子SPA!編集部>
黒川伊保子
(株)感性リサーチ代表取締役社長。1959年生まれ、奈良女子大学理学部物理学科卒業。コンピューターメーカーでAI(人工知能)開発に従事、2003年現職。『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』がベストセラーに。近著に『
息子のトリセツ』『
母のトリセツ』