ドラマ『きのう何食べた?』オープニングはなぜ“縦画面”でなければならないのか
BLドラマの名作は数あれど、BL深夜ドラマの“聖地”テレビ東京が放送する『きのう何食べた?』(2019年)に叶う作品はないだろう。
待望の続編『きのう何食べた? Season2』(以下、『season2』)が、2023年10月3日にスタート。毎週金曜日深夜から放送されている。
今回も西島秀俊と内野聖陽によるシロさん&賢二コンビが変わらず平常運転だ。
「イケメンとBLドラマ」をこよなく愛するコラムニスト・加賀谷健が、なぜか本作をずーっと見ていたくなる理由を紐解く。
西島秀俊&内野聖陽『きのう何食べた?』、草川拓弥&西垣匠『みなと商事コインランドリー』(2022年)。テレビ東京を代表するこの大ヒットBLドラマ作品には明確な共通点がある。それはドラマ本編ではなく、オープニングにあるのだ。
両作品(『みなと商事コインランドリー』は特にシーズン2)ともにオープニングで主人公たちの何気ないやり取りが映される。カメラはどちらか一方の手持ちによる目線として描かれ、ふたりの日常風景を視聴者が覗き見て、より身近に感じるられる演出だ。
しかも縦長の画面。これは明らかにInstagramなどのSNSフォーマットを意識したもの。『きのう何食べた?』なら矢吹賢二(内野聖陽)が、『みなと商事コインランドリー』なら香月慎太郎(西垣匠)が基本的にカメラを回し、きゃっきゃしながらナチュラルな一コマを収めていく。
だがそれ以上にこのオープニングの演出には素晴らしい意味がある。なぜ通常のドラマに適した横画面ではなく、あえて縦画面でなければならないのか。それはBLという男性同士の恋愛を描く視点にも関わってくる。
もし横画面なら、視聴者はすぐにドラマ本編のBL世界に入っていけるだろう。例えば同じテレビ東京の大ヒットBLドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(2020年)のオープニングは横画面であり、ドラマとしてのフィクション性が強調されている。
だが縦画面になり、しかもそれがドラマ内のキャラクターによる撮影(という設定)になった途端、SNSが浸透する現代では普通にInstagramのストーリーなどに流れてくる映像として視聴者はすんなり受け止めることになる。
要するに、この縦の長方形の中に主人公たちが送るBL的な日常があり、LGBTQへの理解が叫ばれる時代に自分たちはこうしてごく当たり前に暮らしているのだという生活感がナチュラルに伝わる。これがこの縦画面で表現される意味合いだ。
テレビ東京を代表するBLドラマ作品

縦画面で表現される意味
