
画面下に録画ボタンが表示されている『きのう何食べた?』のオープニングは特に作品全体とのテーマとうまく配合されている。内野演じる美容師の賢二が、弁護士で料理担当の筧史朗(西島秀俊)がキッチンで料理をする姿を撮影する。
作品タイトル通り、このオープニングがあるおかげで、「あれ前回はこのふたり何食べてたっけな?」と思い返しながら次の回を楽しめる。
しかも賢二が呼ぶ史朗の通称「シロさん」を視聴者も「シロさん、シロさん」と繰り返し呼びまくりたくなるほっこり感。
そこへ賢二が思わずフレームインする瞬間には、シロさん&賢二コンビを愛おしく感じる。ほんと、完璧に視聴者を作品世界にもっていくドラマではないか。もうこのオープニングだけでもループしていたいくらいだ。

肝心のドラマ本編に入り、史朗と賢二の日常が始まる。特に何か事件が起こるわけではなく、これと言って特別な展開の魅力があるわけでもない。なのに、ふたりのやり取りをずーっと見ていたくなるのはなぜか。
テレ東お得意の料理物ドラマではあるものの、史朗が作る献立頼みのドラマ構成でもない。
「いやじゃあ、いったいこのドラマは何を描いてんだ?」となるのだが、これはもうただただシロさんを愛でるためにだけあるのかもしれない。
何せ、史朗を演じるのが西島秀俊なのだ。この人が家計を切り詰める主夫弁護士を演じるだけで面白いに決まっている。料理を作って食べさせる相手が内野さんの破壊力あるキャラなのだから、なおさらのこと。
例えば、第11話。料理友達の富永佳代子(田中美佐子)の自宅で玉ねぎを分けてもらう場面。佳代子の夫(矢柴俊博)の横で食卓に座る西島が上手から下手へ、そこからさらに上手へ視線を単純に動かし、戻すだけで感動してしまう。
それから毎話の食卓場面。嬉しそうにご飯を食べる賢二を見つめる史朗のニコッとした表情も素晴らしい。