
「近年、若い世代で経済的にも精神的にも自立した女性が増えてきているように、年配の女性も精神的に強くなってきています。昭和的な“守ってもらう弱い女性”はもう居ないと言いますか、『妻が耐えて家庭を維持する』といった古い概念はなくなってきています。
こうした変化もあってか、男性からの熟年離婚のご相談理由には『これだけ働いているのに感謝してもらえない』『ATM的な存在の自分に耐えられない』といった声も多いです。
現代の夫も、妻の態度に『耐えている』ケースが一定数あるわけです。社会的に望ましいことであると思いますが、昔にくらべて女性の意見が通りやすい側面もありますから、男性の立場は大変という見方もできるかもしれません」
ちなみに、離婚理由は男女それぞれあるとはいえ、両者に共通するものとして、相手のモラハラを訴えるケースが一定数あるといいます。
今は妻が夫に罵詈雑言を浴びせたり、手を出したりするケースも増えているので、相談者に男性が増えたり、そもそもカウンセリングではなく、弁護士へ離婚相談に行ったりするケースもあるというわけです。
カウンセリングに来訪する熟年離婚の希望者は、年代も理由も温度も幅広いものの、相談内容には共通する“心の声”があるといいます。
それは「どうしたらいいか分からない」なのだとか。自分のことなのに分からないとは、いったいどういうことか。緒方さんから見ると、「長年自分の気持ちを置き去りにした結果」だといいます。
「カウンセリングにいらっしゃる方は、男女どちらも『どうしたらいいか分からない』と話す方が多いです。自分の気持が分からないけど、もうこれ以上我慢をしたくない状態です。
現状は自分の選択した結果ではあるものの、そもそも『自分がこうしたい』からではなく、年齢や親の意見など、周りを意識して行動した結果だったりもします。
つまり、熟年離婚を望まれる方には、夫婦関係だけでなく、長年自分の気持ちを置き去りにし、色んなことに我慢強く耐えていた方が多いんですね。これって、いわゆる『自分の気持ちに正直に生きる』とは真逆の選択です。周囲の目を踏まえて理性的に行動し続けた結果、『自分はどうしたいか』が、麻痺して分からなくなっているんです。
今まさに悩んでいる方も多いと思いますが、ここは時間をかけ、本当の自分はどうしていきたいかを見ていくと、最終的に離婚でも再構築でも、納得できる答えが見えて来るのではないでしょうか」
熟年離婚について、皆さんの中でイメージの変化や気付きはあったでしょうか。
筆者はシンプルに妻側からつきつけるケースがほとんどだと想像していましたが、現実は男女間のあり方の変化によって、熟年の夫婦であっても、その形が大きく変わろうとしているのだなと感じるのでした。
<取材・文/おおしまりえ>
【緒方リサコ】
株式会社オフィス・サット・ピリアロハカウンセリング代表。25歳で結婚。47歳で子連れ離婚をする。「息子とも末長く良い関係を構築しお互いが成長していけたら」と、アドラー心理学(親子関係・家族関係)を学ぶ。親子/家族関係や嫁姑問題等を踏まえたパートナーとの関係修復や離婚相談、大切な人とパートナーシップを築くためのコミュニケーションのサポートができたらと、
ピリアロハカウンセリングを設立し、現在に至る。
おおしまりえ
コラムニスト・恋愛ジャーナリスト・キャリアコンサルタント。「働き方と愛し方を知る者は豊かな人生を送ることができる」をモットーに、女性の働き方と幸せな恋愛を主なテーマに発信を行う。2024年からオンラインの恋愛コーチングサービスも展開中。X:
@utena0518