
お酒が入った父は、さらに彼に対して嫌味な発言を続けます。
「公務員は給料が少しずつしか上がらないからな」「本当に厳しい中、よくやってるよな」「泊まり勤務の日は紗奈を1人で待たせるのか」「子どもを育てられる収入だと思っているのか」など、彼が言葉に詰まっているのを無視し次から次へと畳み掛ける父。
彼は肩をすぼめてうつむきながら、「はい、すいません」と小声で答えるしかありませんでした。鍛え上げられた筋肉質の身体はとても小さく見えたそう。
「私が父に、『経済的に厳しければ、私が働くから』と言うと、父は椅子から立ち上がって、『お前が働きに出ないと生活できないなんて! 本当に結婚して幸せと言えるのか?』と目に涙を浮かべながら言ってきたんです」
そんな父を見かねて母が助け舟を出します。しかし、その母の言葉にもがっかりしたという紗奈さん。
「母が父に、『お父さん、もうよしなさいよ。紗奈がそれで満足しているのだから、いいじゃないの』と言ったんです。母が言っていることは確かにその通りなんですけどね……。『それで満足』って、結婚の挨拶をしにきた彼の前で言うことではないですよね」
なんとか帰省を終え、東京に戻った紗奈さんは婚姻届を提出しました。
「帰省での両親のことを彼は、『大丈夫だよ』と笑顔で流してくれました。私は、彼が消防士としてハードな仕事に耐えながら頑張っているのを知っているので、これからもそんな彼と一緒に生きていきたいと思います」
二人が力を合わせて生活を成り立たせていく姿を両親に見せることで、いつかわだかまりが解けるときも来るのではないでしょうか。夫婦にとってお金よりも大切なものがあるということが、紗奈さんの両親に伝わることを願います。
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<取材・文/maki>