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生理前の凄まじいイライラに苦しむ女性に、同僚男性がかけた言葉が尊い|映画『夜明けのすべて』

 瀬尾まいこの同名小説を映画化した『夜明けのすべて』が、2024年2月9日より劇場上映中だ。公開直後から絶賛の声が続々と挙がり、現在Filmarksと映画.comでは5点満点中4.2点のスコアを記録している。
「夜明けのすべて」

©瀬尾まいこ/2024「夜明けのすべて」製作委員会

 目玉となるのはNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』で夫婦を演じた松村北斗と上白石萌音のW主演。また、松村北斗は『すずめの戸締まり』で、上白石萌音は『君の名は。』での声の出演もあって、それらの監督である新海誠が称賛コメントをX(旧Twitter)に投稿している。  重要なのは、同僚である主人公の2人が「恋愛関係にはならない」こと。そして、「お互いの問題を理解しようとアプローチをして」「絶妙な距離感で助け合う」物語であることだろう。  また、本作は映画館で観ることを強くおすすめする。細やかな演出が冴え渡っており、16mmフィルムで撮られた美しい画、原作とは異なる「舞台装置」は劇場のスクリーンとの相性も抜群で、「浸る」ように観てほしいからだ。さらなる魅力を記していこう。

上白石萌音が「想像」でも向き合ったPMSの症状

 上白石萌音演じる「藤沢さん」は、PMS(月経前症候群)を抱えている。イライラが抑えられず、突如として激昂してしまう症状のため、前の職場での退職を余儀なくされていたのだ。  その「どうしようもない」症状の苦しさが、上白石萌音の必死の表情で伝わる。普段の彼女は周りへの気配りが人一倍できる、どこにでもいる普通の女性に見えるからこそ、症状が出た時のギャップがより切実に感じられるだろう。  上白石萌音は演技で怒っている最中よりも、「その後」のほうがつらくなったそうだ。その理由は、「お芝居でもこんなに苦しいんだから、実際にPMSの症状がある人たちはもっとつらいんだよなと痛感した」から。その「想像」も含めて誠実に役に向きあった姿を、見届けてほしい。

松村北斗の医療監修も踏まえたパニック障害の演技

 もうひとりの主人公、転職してきたばかりの松村北斗演じる「山添くん」は、パニック障害を抱えている。表面上では無気力かつドライで時に不遜に思えるものの、それだけでない繊細さも見えてくる。彼もまた症状そのものに苦しむだけでなく、いくつかの事柄を「あきらめて」いたことが次第にわかっていくのだ。  その松村北斗のパニック障害の演技も、真に迫っているという言葉では足りない。実際に、演技であっても過換気症候群になってしまう危険性があるそうで、現場では練習から本番まで医療監修の先生が近くにいたという。  本当に苦しんでいるのではないかと心配してしまうほどの熱演だが、現場では十分なケアもされているのだ。
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ズレたやり取りがクスクス笑えるコメディーに
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