
それらのPMSとパニック障害の苦しさを描いてこそ、2人の「距離感」が良い方向へと変わっていく様が、とても愛おしくて尊く思えることが、本作の大きな魅力だ。
2人は初めは(必要な過程ではあっただろうが)距離感を間違えてしまう。藤沢さんは、きれいに磨いた自転車をプレゼントしようと、山添くんの家まで直接やってきて、迷惑がられたりする。
山添くんも、PMSを勉強したものの、唐突でしつこい上にズレたアプローチをしてしまうため、「なんなの、いちいち」と藤沢さんにウザがられてしまったりするのだ。
そうしたやり取りはギスギスするだけではなく、クスクス笑えるコメディーにもなっている。特に「散髪」のくだりは、藤沢さんが「真剣に失敗をリカバーしようとする」からこそ、山添くんのツッコミに大笑いできるだろう。
そんな2人の関係性と距離感は、山添くんの以下の言葉を発端として、しだいに「正解」を見つけていったように思えた。
「自分の発作はどうにもならないですけど、3回に1回くらいだったら、藤沢さんのこと助けられると思うんですよ」
相手のことを絶対に救えるわけじゃないし、自分のことだってどうにもならないかもしれない。それでも、助けられることはあるかもしれない。現実でも、苦しんでいる身近な誰かに、そのような「可能性」を提案できるのではと、心から思えたのだ。
そして、2人はいつしか「じゃあ、また明日」「うん、また明日」と言って別れたりもする。なんてことはない、あっさりとした、ごく普通のやり取りおよび距離感になったと思えるからこそ、理想的に見えるし、ずっと見ていたくなるほどだった。