木梨憲武が自ら電話して共演オファーした62歳俳優。昭和の大スターを父に持つ“存在感”とは
木梨憲武が、主演ドラマでの共演オファーをするため、中井貴一に電話する。即座に回答して、出演が決まる。そんな世界線が……。
木梨主演ドラマ『春になったら』(関西テレビ)が、毎週月曜日よる10時から放送されている。第4話に親友役としてゲスト登場した中井の出演が話題になった。
この友情共演がなぜ感動的だったのか。イケメン俳優の探求をライフワークとする“イケメンサーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、中井貴一のキャリアを振り返りながら、解説する。
余命宣告された初老の父・椎名雅彦(木梨憲武)が、死ぬまでにやりたいことリストを作成する。娘・椎名瞳(奈緒)との伊豆旅行など、残りの3ヶ月、悔いのないように、持ち前の明るさでご機嫌に生きようとする。
リスト項目の2つ目。「神に謝る」と書かれているのだが、一見、唐突に神頼みなのかなんて思っていたら、神君という親友のことだった。
もう長い間会っていない親友とのもやもやを解消するため、雅彦は、神健一郎(中井貴一)が営む喫茶店を訪ねる。
中学2年のとき、神から好きな人への代理告白を頼まれた雅彦が、逆に告白されてしまった青春の裏切りを詫びる。謝られた神はなんだか終始気まずそう。実は自分も謝ることがあると切り替えす。拍子抜けする雅彦は、神が発した言葉に見当がつかない。それで黙ってコーヒーを飲んで帰ってきてしまう。
すると今度は瞳が、神の真意を確かめるため、喫茶店へ。開店と同時に瞳がやってくる。初めは気づかない神が、彼女の気配を感じ、咄嗟に二度見。これこれ。このすっとんきょうな仕草こそ、中井貴一特有のものだ(!)。そうか、中井貴一って、日本一の“二度見俳優”だったのだといまさら気づく。

画像:関西テレビ『春になったら』公式サイトより
日本一の“二度見俳優”
中井貴一的な空気感
なぜか腑に落ちてしまった。この人の二度見には、この人にしかないと感じさせる特別な空気感があるから。神が謝りたかったことの一部始終を父に代わって瞳が聞く。(またしても代理的な)店内の場面がさらにじわじわくる。 神が高校1年の出来事を噛みしめるように語り始める。当時の場面が回想としてはさまる。かなり説明的な会話場面に過ぎないのだけれど、中井の呼吸、その息づかいに合わせた現在と過去のシンクロにはグッとくるものがある。 過去を追想しながら、穏やかに語る中井の表情は、中井貴一的としか形容しようがない空気につつまれる。コーヒーをおとす香ばしい香りをもまとわせながら、しっとりつややかに、温かく。