木梨憲武が自ら電話して共演オファーした62歳俳優。昭和の大スターを父に持つ“存在感”とは
親友同士が呼応する感動
その意味では、『春になったら』の神役は、凄みと柔らかさの中間に位置づけることができる。故にここ数年を代表する名演だと筆者は思うのだ。雅彦が最初に訪ねていった場面では、渋い顔でほとんど無言。 瞳が二度目に訪ねると、手元のコーヒーに温かい眼差しを注ぎながら、青春時代の過ちを明かす。実際に親友同士でもある木梨憲武との友情共演だからこそ、自然と漂う空気感があるのかもしれない。 演技とは別の意味で、中井と木梨は心なしか、ちょっと照れくさそうに演じている。瞳の計らいで母校で再会する場面が素晴らしかった。過去の誤解が解けて、昔のようにじゃれ合うとき、神が「タッハッハ」といかにも中井っぽい笑い方でおどける。 この笑い声は、第2話の伊豆旅行で、瞳と海岸を歩く雅彦が照れ隠しみたいに発した「タッ(トゥフフ)」とピタリと呼応している。中井と木梨がこうして共振するかのような呼応がほんとうに感動的なのだ。 <文/加賀谷健>