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あのちゃんが声優初挑戦でみせた表現力。“過去の壮絶体験”とリンクするようなシーンも

いじめに遭遇した経験を語ったことも

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前編 さらに、重要なのは今回の映画『デデデデ 前章』の後半の展開。主人公2人の小学生時代へと時間が遡り、あのが演じる凰蘭と、その友達である幾多りら演じる小山門出(かどで)は、共にいじめられっ子のような立場となっている。  あのは、『あちこちオードリー』で中学生時代にカッターナイフで攻撃されるなど過激化していくいじめに遭遇し、ある時に腕を掴んで「それやめないと、おまえの席がなくなるからな!」と一喝していじめをやめさせた経験を語っていたこともある。  さらに、あのは『あのちゃんの電電電波♪赤裸々電電人生ゲーム』で中学生時代の「クラスの全部の机をバーンとやって(ひっくり返して)、荒らしに荒らしまくった」「学校じゅうの先生が集まってきて、廊下の端から端まで、胸ぐらをグッてつかまれて『お前なんか学校来るんじゃねえ!』と言われた」「スクールバッグも隠された」と、壮絶な出来事を語っていた。

壮絶な経験をした「かつての自分」を心配するような構成

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前編 そんなあのが今回の映画『デデデデ 前章』で演じた小学生時代の凰蘭は、友達の門出からヒーローのように助けられたりする、やや受け身でありながらも高校生時代よりもさらに純粋で素直な女の子に思える。  そして、とある苛烈な事態を経て、凰蘭は、まさに「机をひっくり返す」ほどに「暴走」をする門出を心配し、涙を流しながらも名前を呼び、切実に「止めようとする」立場にもなるのだ。  つまり、あの自身の「子ども時代にいじめを経験した」「荒れに荒れて机をひっくり返した」経験が、映画『デデデデ 前章』の主人公2人の関係にもシンクロしていて、「親友の立場(あのが声をあてている凰蘭)からかつての自分(過去のあののように暴走してしまった門出)を心から心配している」ような構造があると思えたのだ。  さらには、あのと幾多りらそれぞれが、高校生時代とは違う「子どもらしい演技と声質」になっていたことも凄まじい。終盤のとある場面での、絶望をにじませた幾多りらと、その心情をすべて汲み取り感情を爆発させたようなあのの演技に、落涙せざるを得なかったのだ。 デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前編 それ以外でも、『デデデデ 前章』は巨大な宇宙船が上空に浮かぶ東京での日常的な出来事や混乱が、コロナ禍の現実を連想させたり、原作者の浅野いにおが制作にガッツリと関わってこその美麗で細やかな作画や演出など、全方位的に見どころ満載な傑作だ。  ぜひ劇場で見届けて、5月24日公開の『後章』を心待ちにしてほしい。 <文/ヒナタカ>
ヒナタカ
WEB媒体「All About ニュース」「ねとらぼ」「CINEMAS+」、紙媒体『月刊総務』などで記事を執筆中の映画ライター。Xアカウント:@HinatakaJeF
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